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概要

形 forme 312号

図画工作、美術の授業で学んできたこと、それを生かすとどんな見え方が広がって、どんな未来が描けるでしょうか。今回は、第六回高校生アートライター大賞を受賞した中村陽道さんです。東京都立工芸高等学校中村陽道 さんText: Eiichi Hosokawa(ART DIVER) Photo: Tomonori Ozawa 小さい頃から絵を描くことやモノづくりが好きで、専門学科のある高校に進みました。そこで僕はデザイン科に所属し、主にグラフィックデザインの勉強をしてきました。 2 年生の授業の課題で、高校生アートライター大賞に応募することになりました。展覧会を見るのが好きなので、表参道のスパイラルガーデンで開催された「ARTsof JOMON」展についてのエッセイを書くことにしたのです。それまでは、モダンなものや先鋭的なものに惹かれがちでしたが、「縄文」をテーマに現代作家が作品をつくったこの展覧会は、芸術に対するイメージをがらりと変えました。 なぜ、人には芸術が必要なのでしょうか。古くから繰り返されてきた表現の歴史は、激しい川の流れを連想させます。表現物は一つの岩となり、川の流れをほんの少し変えていく。その小さな岩を残すことこそが、人が生きる証になるのだと、「ARTs of JOMON」展を見て直感しました。現代にまで強い影響を与え続ける縄文の造形に、人が表現をすることの意味を感じたのです。 感じたことを言葉で表現するのは、理解するということです。逆に、言葉にならないものは、理解が十分でないこともわかりました。僕は、美術大学のデザイン科への進学を希望しています。将来何になるかは決めていませんが、感覚と言葉の二つを往復しながら、川の流れをほんの少し変えるような「生きる証」となる表現を残せたらいいなと、ちょっと大げさですが……、今は考えています。感じることと言葉にすることforme | 312 | 26