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概要

形 forme 312号

AIの進歩でコンピュータも想像力を獲得できる!? 昨年、人工知能(AI)アルファ碁と、世界で最も強い棋士のひとりと言われるイ・セドル九段が対局を行い、AIが勝ったというニュースが世界中を驚かせた。また日本では、AIが書いた小説が、短編小説を対象にした公募文学賞である星新一賞の一次選考を通過したことも話題になった。 これまでは、どんなにAIが発達しても、コンピュータは指示されたプログラム通りに動くものであり、人間のような想像力はもっておらず、原理的にももてないだろうと考えられてきた。しかし、三十年以上に渡ってAIの研究に携わり、AIによる小説執筆プロジェクトなどに取組む、公立はこだて未来大学教授の松原仁先生は、将来は、コンピュータに想像力を獲得させることも可能だという。「人間は進化の過程において、何らかの形で想像力というものを身に着けてきました。その結果、高度な芸術作品の創作から日々の暮らしの営みまで、人間にとって想像力はごく普通の能力として発揮されています。一方で、想像力については心理学や脳科学の専門家でも、その仕組みや獲得方法を、いまだ明確に解明できていません。しかし、どんなに神秘的に見えても、想像力とは合理性があって人間が獲得した能力なのですから、難しいかもしれませんがコンピュータにももてるはずの力だと思うのです」AIの想像力が生み出した将棋の新手「3七銀」 進化の過程で人間が獲得し、遠くない将来、コンピュータも獲得するかもしれない想像力とは、本質的にどのようなものなのか?「AI研究をしている立場からすると、想像力というのは、ランダムにたくさんの候補を思いついて、その中からよりよいものを拾い上げて行動する能力ではないでしょうか。人間の場合、本人にその自覚がないことが多いですが、無意識のうちに数多くのことを考えて思いつき、その中から少数のものを選んで行動しています。たくさんのことを思いついて、その中からよいものを選ぶということが想像力であれば、コンピュータにも獲得できる可能性があるといえるでしょう」 たとえば将棋の世界では、ポナンザ想像とは枠をはみ出す原動力人間の進化を支えた無二の能力Text: Kenji Senuma forme | 312 | 08