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概要

形 forme 313号

成相 肇 なりあい・はじめ東京ステ??シ??ンギ??ラリ??学芸員??一九七九年生まれ??府中市美術館学芸員を経て??二〇一二年から現職??主な企画展に?石子順造的世界????デ??スカバ????デ??スカバ??・ジ??パン????パロデ????二重の声?など??東京ステ??シ??ンギ??ラリ??展覧会情報?シ??ガ??ル 三次元の世界???12月3日?仕事に切羽詰??てコピ??ロボ??トを入手したがロボ??トが飲みに行??てしま??て泣いた??という夢を見ました??今の自分が本人かロボかわからない事態に??せむいいん いくつかの美術館が所蔵しているこの著名な?手?が二つ同時に並ぶという珍しい展示を見て??のけぞ??てしま??たことがあります??あれ??おいおい??ぜんぜんちがうぞ!もちろん作品自体はま??たく同じ形??にもかかわらず??片方は仏像の手のように見え??一方は西洋彫刻のように見える??い??たいなぜ?? 双子を見分けるようにして観察してみると??唯一の違いは??手の像が台座に据えられている角度の??ほんとうにごくわずかな差でした??掌が台座に対して平行にな??ているバ??ジ??ンは??もう一方と比べるといかにも神聖で穏やかな印象が勝り??片や少しだけ斜めに向いたバ??ジ??ンを見てみると??たちまち圧力や動きが感じられるのです??見れば見るほどおもしろい体験でした??同じ型から仏像と彫刻が??別の文脈が??生まれている??いうなればお賽銭と入館料が同じ箱の中に収ま??ている??ほんのち????とのひねりによ??て??時空が転移している??静が動へ??東洋が西洋へ??近世が近代へとジ??ンプしている! 高村光太郎が??仏像が掌を前に向けた施無畏印?奈良の大仏の手もこの形ですね?に着想を得て??自身の手をモデルにしてこの作品をつく??たことはよく知られます??しかしそこで??彼が詩人であ??たことに引き寄せて抒情的な解釈につないでいくと作品本体から目が逸れてしまいます??異様に緊張した指の形が??光太郎が傾倒したロダンの筋骨隆々の彫刻をいかにも思わせる―これが最も普及した説明ですが??掌に正対して見てみると??意外なほど静かな??たしかに仏像のような落ち着きが現れる?? ぼくが見た二つのバ??ジ??ンの??どちらが光太郎の意図を汲んだ配置なのかはわかりません??ただあの見え方の驚くほどの違いは???動かずに?見ることの価値を教えてくれました??むしろこの作品は??きわめて正面性が強いことに気付かされたのです??見る位置を固定するとき??この?手?は最もそのダイナミズム?もしくはダイナミズムの無さ?を発揮する??そして??眼球ひとつ程度のわずかな差で見え方の文脈を大きくスイ??チさせる両義性が??作品に内蔵されている??複数の空間情報が圧縮されて??断続的に埋め込まれている??ぐるりと眺め回したならば??そのドラマチ??クな両義性は滑らかに解消されてしまうでし??う??立体感や空間と呼ばれるものは??必ずしも全方向から把握されるものではないのです??文動かずに見てみる?今号のひと言?⑰ forme No.313