ブックタイトル形 forme 319号
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形 forme 319号
文系・理系の7つの研究科を「アート」を軸に横断する組織。アートを取り入れたプログラムを実施することで、学生や研究者の知性を拡張し、社会の未来をひらく新たな価値創造を目的とする。2019年5月発足。ACUTに所属する筧康明准教授の研究室では、西陣織をベースに、異素材を使用して新たな機能をもたせた織物を制作。芸術とテクノロジーを掛け合わせた研究では、アートと科学分野両方の感覚が必要となる。制作:東京大学筧康明研究室+株式会社細尾+山口情報芸術センター東京大学芸術創造連携研究機構 ACUT(Art Center, The University of Tokyo)既存の美術の概念にとらわれない自由な切り口で、数多くのワークショップや空間プロデュース、展覧会企画などを手がける。クリエイティブリユースの実験室「IDEA R LAB」(岡山県)をベースに活動。IDEA R LAB大月 ヒロ子(おおつき ひろこ) 「クリエイティブリユース」とは、家庭や企業から出た廃材を別の何かにつくり変え、新しい価値を生み出す取り組みのことを言います。つくり手の創造力がいかんなく発揮される点が特徴です。 二〇一三年に地元・岡山県倉敷市の玉島に「IDEA R LAB」という拠点を開設し、クリエイティブリユースを核にした活動を開始しました。廃材の利点は田舎であれ都会であれ人間がいるかぎり必ず出てくること、地域特性があること、そして無料であることです。電話帳をめくり、現地の企業になんのツテもなく電話をしたのですが、プラスチック工場や縫製工場の方々が取り組みに賛同してくれて、その後も、各所から色とりどりの魅力的な廃材が次々と集まってくるようになりました。 こうして集めた廃材を素材にして子どもたちとものづくりワークショップを行うと、皆、目を輝かせながらつくり始めます。特に盛り上がるのは分類作業で、分類することでゴミの山がある一瞬から素材の山になる。それを経験すると面白くてしょうがなくなるようです。廃材からものをつくることは、廃材を何かに見立てるということです。見立ては美術で身に付く重要な力。見立てを通してイメージを豊かに鍛えることで、自分の頭で判断する力が身に付きます。私は小さい頃からものづくりが好きでしたが、美術とは美術館にあるようなものだけでなく、もっと自由で楽しいものです。美術的な目線で街の扉を開けると、こんなにも面白いものやきれいなものがある。それに気付くことは、生きる喜びであり、今の仕事や活動を支える原動力だと感じています。今はまだ小規模な活動ですが、「こんなこともできる」という実例を重ねていけば、学校など公の場でも取り入れることができるでしょう。廃校などの空きスペースを活用して、クリエイティブリユースの拠点が増えればいいなと思っています。 今年から東京国立近代美術館で開催されている、ビジネスパーソン向けアート鑑賞プログラム「Dialogue in the Museum」が、大きな話題となっています。『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか』の著者・山口周さんを共同企画者に迎え、アート鑑賞を通してビジネスセンスを鍛える試みが、意識の高いビジネスパーソンの共感を呼んでいます。参加者は、どんな力を身に付けることができるのでしょう。 「当館では二〇〇三年から来館者向けの対話鑑賞プログラムを実施してきました。そうして蓄積してきたノウハウの上に、山口さんによるレクチャーを組み合わせることで、「観る力」「感じる力」「言葉にする力」「多様性を受け入れる力」「美意識」の5つの力を育てるプログラムとしました。アート鑑賞によって身に付けられるこれらの力が、現代のビジネスに必須のスキルとなったことが、高い関心が寄せられている理由の一つなのだと思います」(担当者)。 中学生の時期にこれらと同様の力を身に付けられるかどうかが、社会に出たときにますます重視されそうです。ゴミの山が宝の山に変わるInterview 02特集中1・中2・中3でこんなに違う!Column なぜ今社会人がアートを学ぶ?Interview 01はなく、「教師に反論する」学生です。その意味で、アートにおける答えは一つではありませんから、いろいろな発想が可能だということを中学生の頃から経験することで、可能性がどんどん膨らむのではと期待しています。 そもそも学びとは、上から押し付けるものではなく、生徒の中に「知りたい、学びたい」という自主的な欲求、つまり種を育むことです。そうした種は、心がリラックスし、楽しみたいという気持ちになって初めて生まれてきます。その子にとって面白くないものであれば、別のもっと面白いものを見付ければいい。その子の中に一つでも二つでも面白いものができれば、それがその子のセンスになっていきます。 何かを面白がる心の豊かさや余裕は様々な心の扉を開きますが、その土壌を育むことがアートの役割です。中学生の頃からアートを通して心を豊かにし、自主的に学んでいくことで、知識と感性とを併せもった総合的な「教養」を身に付けてほしいと思っています。(左)Heteroweave 002