ブックタイトル形 forme 320号
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形 forme 320号
私たちは「けっこういいこと」をやってきた 海外のアートブームが日本にもやってきました。ビジネスや人材育成などでアートが活用され、教育界でもデザイン思考やSTEAMなど美術教育に対する期待が高まっています。社会全体がアートや美術教育に注目するという「これまでにない状況」が生まれているのです。 一方で「美術教育は問題解決の道具なのか?」という声があります。確かに美術教育の「青い鳥」美術が混迷を溶きほぐす唯一解のように述べられることには戸惑いを覚えます。また、「アートはビジネスに役立つ」という功利的な主張や、「感性こそ重要」「美術は必須の教養」などこれまでの説明を繰り返す姿勢にも疑問が残ります。それらは、過去に十分な説得力をもてませんでした。 とはいえ、おそらくアートブームは一過性ではなく、今後、文化や社会の質などに関わり、美術はますます必要になるでしょう。美術教育は、一人一人の生き方と深く結び付いて重要度を増すでしょう。その端緒が今であり、それは歓迎すべきだろうと思います。 何より、私たちは「けっこういいこと」をやってきたのです。生徒一人一人が絵を描く、粘土をこねる、デザインを考える、その行為や活動は理屈抜きに必要です。子どもが自分の思いを実現する時間と場所は保証されるべきです。これまで行ってきた当たり前の美術教育にこそ意味があるのです。 そのために、私たちは、授業研究をして、研究会に参加し、指導の改善を続けてきました。さまざまな教材や題材を開発し、作品展などを通して保護者や地域とつながってきました。子どもと社会のために歩み続けた歴史が、今日の1つの「授業」に結実しているのです。 「一人一人の子どもの思いを大切に授業する」。それが美術教育の目指してきたことであり、それを守ってきた私たちの実践に自信をもつべきだと思います。そのうえで「子どもが発揮している力を明確に捉え、題材を実践する」「社会と目的を共有し、開かれた美術教育を心掛ける」「美術教育の現代的な意味を見付ける」などが求められるのです。 「青い鳥」は、いつも身近なところにいます。自分たちの足元を見つめ、未来を目指す、その姿勢が重要だろうと思います。奥村先生の「子どもの見方」はp.22-23 へ写真:川瀬一絵特集カリキュラム・マネジメントの核となる「美術」日本体育大学児童スポーツ教育学部 教授奥村 高明おくむらたかあき⑬ forme No.320 小 中 高