ブックタイトル形 forme 320号
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形 forme 320号
SDGs(エスディージーズ)とはSustainable Development Goals(持続可能な開発目標)の略称です。(※次ページの図参照)いまや、世界の共通言語と言ってもいいでしょう。国内では、主に行政や企業の目標として掲げられ、既に多くの取り組みがなされていますが、それが学校現場でも教育活動のテーマとして掲げられることが多くなってきました。しかし、学校現場で「SDGs達成に向けた取り組みをしよう!」としても、SDGsの理念を細分化して子どもたちに名古屋市立本城中学校校長 原 淳子名古屋市の公立中学校に勤務し、2019年より現職。前々任校ではユネスコスクールの立ち上げに携わり、ESDに関するユネスコ世界大会(2014年名古屋市で開催)ではパネル発表を行った。実感を伴い納得させることは、容易ではありません。 ただ、十七の目標の中でも「平和・人権・環境」といった観点は学校現場において大切なテーマになります。ですから、学校現場でできることとしては、ESDを参考に、教科等横断的に環境について考えたり、国際理解を深めたりするカリキュラムを通し、自分たちが当たり前だと思っている平和で美しい世界がいかに多くの人々の努力で成り立っているのかを「知る」ことで、その世界を守り続けながら発展させていこうという思いを子どもたちの中に育んでいくことではないかと思います。最終的な目標はSDGsですが、そこに至るまでの過程で、いかに子どもたちが実感し理解してくれるかが重要です。 我が校では、身近な課題を解決する経験から、それらが世界の課題につながっていることを学べるような取り組みをしています。例えば名古屋市の「なごやINGキャンペーン」では、児童生徒一人一人がいじめをなくすための行動宣言を考え、学級の目標としてまとめ、ポスターを制作する活動をしています。この活動はSDGsの「誰1人として取り残さない」という理念に通ずるものがありますが、子どもたちにはSDGs(ESD)の理念について具体的な説明はしていません。その考えが子どもたちの中に根付けばそれでよいのです。 SDGsと言われると新たな指標だと受け止めてしまいますが、実は私たち教職員が今まで行ってきた当たり前の教育活動だと言えるのです。幸いなことにSDGsの理念は名古屋市の教育目標にも、学校目標にも、すでに根付いています。重要なのは、教員たちがSDGsの意義を理解した上で、子どもたちがその大切さに気付けるようにしていくことです。 子どもたちの意識や生活の中にSDGsの理念が溶け込んでいて、自然に行動に現れてくることを願うならば美術という教科は、とても大きな役割を果たすことができます。 美術科は、造形的な活動に主体的に関わっていく中で、豊かな感性や新しい価値を創り出す能力を育み、人格の形成を目指す教科です。実はSDGsの最終的に目指す方向と、ベクトルが同じなのです。むしろ私の実感としては、以前より取り組んできた、造形教育で育成を目指してきた子どもたちの姿が、世界の目標と重なったように感じます。 もちろん他の教科でも重なりはありますが、society5.0に向けた人材育成のため、文部科学省が報告書の中で、日本の強みとして示している・緻密で洗練されたものづくりの技術・独自の文化的創造力・日常的な営みや自然にまで美や崇高さを感じ取る美意識などは、すべて主に造形教育で培われる力であり、他教科では追随できないものです。日本にこれから期待されている姿とは、こういった強みを生かし、子どもたちの人格形成をしていくことであり、それが遂にはSDGsを達成し、持続可能な社会を実現することにつながるのだと考えています。 さらにSDGsの十七の目標と美術の題材を結びつけると、学びが広がると思いませんか。子どもたちに「造形的な見方・考え方」を明確化した「学習のねらい」を示すことで、発想の幅や、課題解決の方法が広がると思います。 学校はチームです。各教科の先生、家庭や地域社会などと同じ思いをもって歩いていくために、美術科の先生には、ご自身の取り組みで生徒にどのような力がつくのか、美術の見方、考え方や、造形的な視点が何かを、周囲の人に積極的に発信し、美術の学びを核にして広げてほしいと思っています。名古屋市は「SDGs未来都市」に選定され、ESD(持続可能な開発のための教育)を基本に学校現場におけるSDGsの達成への取り組みが推進されています。その取り組みと、美術科が果たす役割について、原先生に伺いました。SDGsの根幹は主体性と多様性の両立。美術教育で育む自己肯定とメタ認知能力は、SDGsの推進を支える力となります。大切なのは「知る」こと日々の教育活動がSDGsにつながっている美術教育の目標はSDGsのかかげる目標と重なる× SDGs美術科だから育める、子どもたちのSDGs「見て感じて描く」「情報をわかりやすく伝えよう」「ゲルニカは語る」「伝統の中の動物たち」「豊かなイメージで伝えよう」「デザインで変える現在と未来」? 平成28年度版中学校美術教科書 「 美術 1」p8・9? 平成28年度版中学校美術教科書 「美術 2・3上」p38・39? 平成28年度版中学校美術教科書 「 美術 2・3下」p30・31? 平成28年度版中学校美術教科書 「 美術 1」p48・49? 平成28年度版中学校美術教科書 「 美術 2・3上」p40・41? 平成28年度版中学校美術教科書 「 美術 2・3下」p46・47これまでに授業で取り組んできている馴染みの題材にも、こんなにSDGsが絡んでいます。身近な題材のスケッチでも、14や15の観点で対象を見つめると、感じ取る形や色彩に変化が生まれるかもしれません。安心で豊かな暮らしのためのサインなら3や7など、持続可能な社会に向けたサインなら5や11、12などの観点を生かすことができます。戦争への嘆きや怒りについては10や16に関連し、世界の問題に目を向けると13、14、15など多様な視点が生かせます。人々の祈りや感謝など祭りの起源を紐解けば、2や3に関連し、祭りを通してその土地の風土について知ることは14や15にも繋がるかもしれません。テーマによりほぼすべての観点に関連しており、作品の素材に目を向けると12にも関連を見いだすことができるかもしれません。地域や社会の課題解決という視点で作品意図を読み取ると、ほぼすべての観点について多様な関連性が見えてきます。持続可能な開発目標(SDGs)2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)の後継として、2015年9月の国連サミットで採択された2030年までの国際開発目標。持続可能な世界を実現するための17のゴール・169のターゲットから構成され、地球上の誰一人として取り残さない(leave no one behind)ことを誓っている。特集カリキュラム・マネジメントの核となる「美術」はらじゅんこ⑦ forme No.320 小 中 高 forme No.320 ⑥