ICT・Educationバックナンバー
ICT・EducationNo.12

巻頭言
 
東京都立大森東高等学校長/全国高等学校視聴覚教育研究協議会会長 井田 良克

 教育用コンピュータ設置校98.3%,学校のインターネット接続率81.8%,コンピュータを繰作できる教員79.7%,コンピュータで指導できる教員40.9%,インターネットを利用して授業を行ったことがある教員22.7%。平成13年9月21日,文部科学省から発表された「学校における情報教育の実態等に関する調査結果」(平成13年3月31日現在)の全国のデータの一部です。

  さて,これらのデータから何が見えてくるのでしょうか。「情報教育の環境はほぼできあがった。しかし,教育現場での活用はこれから。」こんな姿も見えてきます。全国のデータを更にひろってみます。インターネットを利用したことがある教員,小学校75.3%,中学校73.9%,高等学校72.8%。インターネットを利用して授業を行ったことがある教員,小学校30.4%,中学校20.3%,高等学校12.3%。「自分自身でインターネットは使っているが,授業で有効に使えるのか疑問だな。ただホームページを見ているだけではね…。小学校など学年の低いうちは,ホームページを見るだけでも子どもたちは結構楽しんでいるが,高校生にもなると授業中にホームページを見せるだけでは向学心を刺激できないと思うよ。どんな活用法があるのか…。」インターネットの教育への有効な活用方法について,多くの教師たちはとまどっています。

  そんなとまどいや悩みを解決するために,全国で研究や情報交換が活発に行われています。平成13年11月21日・22日の二日間,宮城県仙台市で開かれた「第5回視聴覚教育総合全国大会」もその一つです。全国の幼,小,中,高の先生方や図書館など社会教育に携わってる方,視聴覚教材や機器の製作・販売に携わる関係者が一堂に会し,日頃の研究成果の発表や情報交換を活発に行いました。研究会などでの報告内容は,そこから情報を引き出そうとする者が,どのような教育活動を行いたいと考えているかによっていくつもの顔を見せます。従って,研究会は情報の宝庫と言えるかも知れません。宝を堀り出す視点はいくつもあるでしょう。こんな視点もあるのではないでしょうか。例えば,電子メールを含むインターネットについて。(1)インターネットでなければできないこと。(2)インターネットの方がより有効なこと。(3)インターネットでもできること。(4)インターネットを使うとかえって効果の下がること。(5)インターネットではできないこと。この五つの視点で,自分の教科・科目の授業の教材,ホームルーム経営,生徒会指導,生徒・保護者との連携等々,教育に係わる諸活動を分類しますと,必要な情報が見えてきます。翌日の第一校時に使う外国の学術誌の最新情報は,インターネットでなければ得られないかも知れません。生徒指導に係わる生徒,保護者と教師の三者面談は,インターネットや電子メールではできないでしょう。至近距離で,互いの息づかい,細かな表情を確認し合いながらの話し合いの中から信頼関係が築かれていきます。この信頼関係の構築なくして,有効な生徒指導は行えません。インターネットの不得意な分野でしょう。パソコン,ビデオプロジェクター,デジタルカメラなどの情報関連機器の使用の有効性についても,どんな教育活動を行うかにより,五つの視点で検討が必要でしょう。

  これからの情報教育は,パソコンやインターネットなどの機器やソフトの使用法の習得だけにとどまることではなく,それらを用いていかに有効に情報伝達,つまりコミュニケーションを行っていくかを伝えることであるとの声が聞こえてきています。「IT(情報技術)」から「ICT(情報コミュニケーション技術)」だと。情報機器などの使用方法を新たに身につけることから新たな興味・関心を呼び起こされる教師や生徒は,まだ少なくありません。そのような現状の解決と並行して,研究会関係者の中からの声にも耳を傾けていくことが必要なのでしょう。

    次へ
目次に戻る
上に戻る