ICT・Educationバックナンバー
ICT・EducationNo.17 > p24

コンピュータ教育のバグ
お・し・え・て
—習いたがる生徒と,教えたがる先生と—

 幼児の頃,人は好奇心に支配されているという。何でも知りたがり,何でも聞きたがる。「どうして犬はしゃべらないの?」「何で夜になると眠たくなるの」「どうして,」「なぜ,」。よくもまあ,それだけ疑問を持てるものだというくらいの質問攻めである。しかし,いくつになったころからか,人は自分で判断し,自分で行動し,自分で責任をとるようになる……はずである。

依存心の高い日本の若者たち
 日本の生徒は,欧米の生徒にくらべて,親や,社会や,学校など周囲への依存心が強いのではないかという話がある。高校生ともなると,学業そっちのけでアルバイトに精をだしている例も少なくない。これはなにも日本に限ったことではなく,高校生が何かしらのアルバイトをするというのは,世界でも特に珍しいことではない。しかし,そこで稼いだお金の遣いみちとなると,事情が違うようだ。例えば欧米では,学費の捻出など自分自身に必要な費用のために行っている場合も多いのに対して,日本では多くの場合,遊ぶための小遣い稼ぎであるようだ。

 また,アルバイトで稼いだお金などで,卒業旅行に出かけるというのは,洋の東西を問わずよくあるようだ。しかし,ここでも欧米の若者は,リュック一つを背負って海外に出かけて見聞をひろめているのに対して,日本の高校生の卒業旅行が,テーマパークで遊んでいるだけだったり,会社の慰安旅行のような温泉旅行だったりしてしまうのである。温泉旅行だって,景色を愛でて,風情を愉しむという意味では,大変赴き深いものではある。しかし,アルバイトで稼いだお金で温泉旅行といわれると,これでいいのかと考えさせられるものがある。学費などの一切は,親が負担しているということなのだから。
コンピュータ教育を受ける場合も依存心が…
 やや話はかけ離れるようではあるが,コンピュータ教育においても,この依存心が邪魔をしてというケースがよくある。コンピュータの操作がちょっと解らないと,なにからなにまで「先生わかりません。どうすればいいの。おしえて。」と人に頼って解決しようとするのである。先生が教えてくれない場合は,まわりの友だちに尋ねていたりする。操作が解らない時に人に尋ねるという行為は,決して間違っているものではない。しかし,どんな場合でも人に尋ねなくては解決できないようでは,コンピュータを使いこなしているとは言い難い。ヘルプ表示を参照したり,マニュアルをひもといたりして,自力で問題を解決していくこともまた,コンピュータを扱う上では大切なスキルである。

 そしてここに,もう一つ厄介な問題がある。指導する先生も,操作方法の一つ一つを教えたがるのである。コンピュータを情報活用のツールとして考えるのであれば,教えた操作しかできない生徒は優秀とは言えない。しかし,教師の側に,教えていない操作をバンバンこなすよりも,教えたことを忠実に再現できる方をよしとする風潮があることも否めないのである。そんなことまで教えなくてもという操作まで教えていることも,生徒の依存体質を生む温床になっているのではないだろうか。これをどう解決すべきか,誰か教えてほしい。
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