ICT・Educationバックナンバー
ICT・EducationNo.23 > p10〜p13

教育実践例
週8時間授業の実践
大阪府立大正高等学校 中村秀治
1.はじめに
 大正高校は昭和52年創立の比較的新しい学校で,平成16年度より普通科総合選択制への学科の改編があり,比較的多くの授業を選択することのできる学校として再出発したばかりである。
2.情報教育の状況
 昨年度より1年・2年とも2単位の授業があり(1つは情報A,もう1つは学校設定科目),来年度までは3年で8時間,再来年度からは6時間選択することができ(他に3時間の選択もある),他校に比べても情報関連の授業が多方面にわたって選択できるカリキュラムになっている。
3.今年度の授業実践
 1年生では基本として,まずタイピング練習をしてから,ワープロ,表計算と進み,2年以降につなげていくことを目標にしている。

 2年では,1年の学習を元にさらに発展させ,ワープロでは検定を受けることを目標にさせ,スピードや形式を覚えさせ,色々な機能を使わせていく。表計算では,関数をいくつか使わせ,いろいろな書類などを作成させたりデータを加工させたりする。

 3年ではさらに発展させ,2時間はワープロを中心に,2時間は表計算を中心に,2時間は映像や画像の制作や加工を中心に,2時間はWeb関係を中心に授業を進めていく。以下に,3年で実施する4項目について授業の内容を紹介する。

(1)ワープロの指導

 1〜2年で学習してきたことを生かすために,第1にワープロ検定に合格できるように1学期の最初の時間を割いて授業を進めていく。

 まず,10分で400字以上打てるように何回か練習させた。何とか半数以上の生徒ができるようになってきている。

 次に,体裁を整えながら打つ練習をさせ,合格できるように指導を続けた。最終的には,形はほぼ全員覚えて打てるようになった。

 さらに,ワープロソフトを使ってカレンダーや年賀状,地図などを作成させたりして,図形や文字を工夫してより見やすい作品を作らせるようにした。この授業は,最終的に本人にカラーで印刷して渡すこともあり,色遣いも考えながら丁寧に仕上げており,内容的に良かったと思われる。

 最後の方では,社会に出たときに役に立つように,いろいろな機能について紹介して終わることになった。

ワープロソフトで作成した地図
▲ワープロソフトで作成した地図

(2)表計算の指導

 最初の10時間ぐらいは復習もかねた内容にした。1〜2年での学習内容を受けて,単に関数を使うだけでなく,表を見やすくするために罫線の使い方やセルや文字の色遣いも考えさせた。これは,学習内容を再確認するのに効果があり,罫線の使い方やセルの色遣いを工夫することで見やすい表になるという情報伝達において大切なことに気づかせるためにも良かったと思われる。

 次に,住所録を作成させた。初めは単に入力だけをさせたが,各セルに入力規制をかけることで,ひらがな入力,数字入力をすぐ区別できるように指導した後,参照関数(LOOKUP関数)を使って郵便番号から住所が出るような表を作らせた(但し,郵便番号の範囲を狭くし,ワープロソフトでは簡単に出ることも紹介した)。また,ここでは人名などに有名人や歴史上の人物を使ったため,手書きパレットを使わないと出てこない漢字もあり,その面でも指導ができて良かったと思われる。

 2学期に入ってから,並べ替えやフィルタを使って大量のデータを整理・分析させる授業を行った。

 例えば,ある店の10個の商品について売り上げを時間ごとに整理させたり,買い物客の年齢層別のデータを作らせたりして内容を考えさせた。他には何科目かのテストのデータを渡して度数分布や順位付けなどをさせ,内容を考えさせた。

 この授業は,データを用意するのに非常に時間がかかったが(そのために夏休みの間にデータを作っていった),フィルタなど滅多に使わない機能を使わせることで表計算について多方面の使い方を教えていくことができた。生徒にとっても新鮮な感じがあるせいか,なかなかよく取り組んでくれた。

商品の売り上げの表+拡大表示
▲商品の売り上げの表


 2学期後半からは,条件書式を使ってある条件の時のみ文字の色を変えたりフリガナ関数使ったりして,入力時から見やすくする方法を教えていった。生徒にとっても,入力時に色が変わったりするのがおもしろいらしく,すぐなじんでくれて,教える時間がそれほどかからなかった点は良かったと思われる。

 最後の8時間ほどはVBAを中心に教え,特にマクロレコーダーを使うことによって同じ作業を何回もさせることができ,少し内容を変えることでもっと便利になることを教えた。しかし,内容的に難しいことなのでなかなか全員に理解させるのはつらい状態で,上滑りしてしまったという感じがした。

内容・時間・品物・年齢について整理する表 +拡大表示
▲内容・時間・品物・年齢について整理する表


(3)画像・映像関係の指導

 1学期中間考査までは,六角大王というソフトを使って,立体的な図形を作らせた。まず,このソフトの操作を4時間かけて説明してから,材木を1本作らせて,これを複製して組み合わせることで,ログハウスを全員に作らせた。この実習は,簡単な部品1つだけを使って組み立てることができ,比較的に簡単に形ができていくので,かなりの生徒が楽しそうに取り組み,操作に慣れさせるには良かったと思われる。

 次に,自由制作ということで,まず,作品例を少し見せて,作り方をいくつか紹介してから制作に取り組ませた。この実習は,時間をかけてこつこつと作業する生徒はなかなか良い作品を作ったが,うまくいかなかった生徒はあきらめていく傾向があり,あまり大したことのない作品も見られたのは残念だった。

六角大王で作成した時計
▲六角大王で作成した時計

 さらに,Photoshopを使った写真の合成や画像の修正などを4ヶ月かけて教えた。合成では,簡単な図形同士の合成から始め,その後別々に撮った人物像を合成することで1つの写真にすることを目標に取り組ませた。この実習は,うまくいく生徒といかない生徒にかなり分かれたが,うまくいった生徒の作品では1枚の写真のように見えるものもあり,内容的には良かったと思われる。

 次に画像の修正に取り組ませた。最初は単純に画像を見やすくすることから始め,そこから,背景を大きく変えたり縁の模様を変化させたりして,インパクトのある写真に変えていく作業をに取り組ませた。これは,直線を大きく変化させることができるので,作品に個性が出てきたと思われる。

 さらに,自由に絵を描かせての作品制作に取り組ませた。始めに,自分の写真を使って,写真に個性を出させたり文字を工夫させたりして数種類の名刺を作成させた。これは,自分の写真を使うので思い切った変形もでき,最低でも写真と名前は記入しなければならないので,おもしろい作品がいくつか見られた。その後で,簡単に形の作り方だけを教えてから数時間をかけて自由に作品を作らせた。内容的には作品によって差が出てしまったが,おもしろい作品もあり,評価する側にとっては楽しい内容であった。

 最後に,パワーポイントを使った作品制作に取り組ませた。各自に同じ内容で表現の仕方を自由にして作品を作らせた。この実習は,表現の仕方がおもしろいこともあって生徒の反応はまずますだったように思われる。

(4)Web関係の指導

 1学期の終わり頃から,ホームページビルダーを使ってWebページ制作に取り組ませた。

 まず,操作の説明を4〜5時間かけて行った。特にリンクについては時間を割いてゆっくりと説明し,全員が使えることを確認した。その後,アニメーションの使い方を紹介してから各自に作品制作に取り組ませた。

 内容は同じ物を使わせて,トップページに大項目を置き,リンクさせたところに中項目をおいて,最終的に項目ごとの説明にリンクさせる内容にしたものを作らせた。壁紙やボタンアニメーションなどに工夫をさせて,独自な内容になるようにさせた。

 この実習は,最初は単純作業なので飽きてくる生徒もいたが,実際にリンクさせると画面が変わっていくので内容的におもしろくなってきたように思われる。作品に動きが入ってくると,個性的でおもしろい作品がいくつか見られるようになってきたので,楽しく評価することができた。ただ,写真をいくつか入れた内容にするには,Web用に写真を加工しなければならないが,映像関係の授業が間に合わなかったので割愛してしまった。その分,内容が乏しくなったのが少し残念であった(学年の終わりの方に実習の順番を変えた方が良かったかもしれない)。

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▲Webページの例

 2学期に入ってから実際にインターネットを使わせることを始めた。まず,2時間かけて操作を説明し,その後で50数種類のキーワード(例えば有名な寺院や近隣の学校等)を検索させて,証拠にタイトルとか画面をコピーさせて1つのファイルに集めさせた。

 1つ1つ調べていくと時間がかかるが,調べ方を変えるとかなり時間を短縮させることができるので,生徒によっては全部調べられる者もいたし,数個しか調べられなかった者もいた。

 しかし,実際に調べていくおもしろさがわかっていくと,生徒が周りに聞いたりして割合にぎやかに授業が進められたので良かったと思われる。

 次に,インターネットを使って内容的に調べる問題に取り組ませて少し内容を発展させてから,最後に旅行を自由に計画させた。内容的には場所も費用も制限しなかったので,漠然としすぎて,生徒にとって表現しにくかったかもしれないと感じた。それでも,交通機関,ホテル等を調べるにはインターネットは便利なので,実習の展開を少し変えれば良い作品ができるかもしれないと感じた。
4.今後の取り組み
 本校は普通科総合選択制に移行し,情報エリアが設置されたこともあり,多くの生徒が選択していく可能性が高く,教える側も日々進歩する情報機器,ソフト,社会規範に対応できるよう努力し続けなければならないと思われる。今年できた内容であっても,2〜3年後には古い内容になってしまうおそれが高いので,多くの担当する先生方と相談し,他校の情報も仕入れていかなければならないと思われる。そのためにも新しい情報に関する情報には気をつけて対応し,生徒にとって役に立つ,興味のある内容になるように日々努めていくことがこれからの課題になっていくと思われる。

 特に3年の選択の授業は,新しいことに対応できるような担当者が複数で担当できるように考えていかなければならないように感じる。
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