ICT・Educationバックナンバー
ICT・EducationNo.28 > p16〜p19

教科「情報」テキスト活用事例
副教材の役割と活用
−実習ノートとIT-Literacy の活用−
日本大学豊山女子高等学校・中学校 中村正夫
m-nakamu@buzan-joshi.hs.nihon-u.ac.jp
1.はじめに
 本校は,東京にある中学を併設する私立高等学校ですが,高校入学時からの生徒募集も行っています。1学年は,普通科6クラスと理数科1クラスあります。昨年度までは,併設の中学から入学した者と他の中学から入学した者が混在するクラスでした。今年度より普通科については,本校中学から入学した者だけの3クラスと高校から入学した者だけの3クラスを別にしました。理数科は,そのまま混在するクラスです。
 高校入学前の中学での情報教育の格差は,学校によってかなりあるようですが,そのようなことにも対応できる授業をしていくために副教材選びが大切だと思います。今回の「情報」テキスト活用事例では,本校が使用している副教材で,日本文教出版の情報A実習ノートとIT-Literacy(WordXP 編・Power Point XP 編・Excel XP 基礎編・Photoshop Elements 編)の役割と活用を中心に紹介したいと思います。
2.本校の情報教育と副教材使用時期
 本校では,併設している中学校で,1年から3年まで隔週で1時間,パソコンの授業を設けています。授業の内容は,ログオン・ログオフ・シャットダウンからはじまって,ブラウザやWord・Excel・Power Pointなどの基本ソフトの操作を中心にしたものです。教材としては,担当者が作成したプリントを使用しています。隔週での授業なので,実際に1学期間に行う授業の回数も少なく,担当者が手の込んだ教材を作ることも可能であることや,学校行事や季節に合わせた作品を作成する授業ができることから,手間がかかっても担当者でプリントを作成するようにしています。女子校ということもあり,機械音痴・パソコン嫌いという先入観を持たせないように心がけ,出来るだけ楽しく作品作りなどの演習を中心とした授業を行っています。
 高校では,1年・3年で各1単位の授業を行っています。カリキュラムを考える際,教科「情報」がセンター試験に導入されるかどうかがわからない時期でしたので,当初の予定では1年の授業で教科書の内容は出来るだけ早く全て扱い,3年の授業で実習及びセンター試験対策と考えていました。実際,教科「情報」は,センター試験に導入されなかったので実習を多く取り入れながら授業を進めていくようになりました。また,副教材からは,問題集をはずして教科書に準拠した実習ノートと実習の手助けとなるアプリケーションソフトの基本操作の習得となる副教材(IT-Literacy)を選ぶことになりました。副教材を使用する時期ですが,ほとんど高校1年で全て扱っています。
3.副教材の選定
 副教材を選定するにあたって次のことに気をつけました。授業で使わない副教材は,選ばない。技能だけが中心となる授業にならないように,教科書の学習をしっかりサポートする副教材を取り入れる。PCルームへの教室移動があるので教科書と同じ大きさで薄いものとする。アプリケーションソフトの基本操作の習得となる副教材では,目次を見ただけで内容がわかり,見開きにしても本が閉じないもの。もちろん,この他にも生徒が作業しやすい内容や見やすさなども必要です。
4.副教材の活用
(1)「情報A実習ノート」の活用
 本校のPCルームでは,パソコンはグループ学習しやすいレイアウトになっていることから24台しかありません。同時に1人1台使用できないことから,パソコンを使用する実習課題と実習ノートの課題提出を平行して与えることにより,パソコンを1人1台使用することができます。
 実習ノートの課題では,教科書の内容確認である「practice」の部分は,教科書で学習したときに行うことにしています。「実習」の部分は,必要に応じて行います。特に,パソコンを使用する実習課題があるときは,ノートの「実習」は行わないようにしています。逆に,実習ノートにある「インターネットを使った情報伝達のマナーについて調べてまとめてみよう。」というような内容は,ワープロソフトなどを使用しないようにしています。インターネットで調べることはいいのですが,そのままどこかのWebページの内容をコピー貼り付けして,自分でまとめることをしないで提出させても何も意味をなさないからです。
 本校では,実習ノートの提出率は,ほぼ100%です。あらかじめ,生徒に対して実習ノートについて評価の対象にすることは述べていることもありますが,生徒たちが作業しやすいような作りになっているのできちんとまとめてきます。また,提出範囲に空欄があると減点することも述べているので分らない部分も諦めずにきちんと調べて提出をしています。提出したノートについては,面倒であっても1ページごとに評価をして表計算ソフトでまとめています。全体で評価をすると担当者が複数いるときは,見る人によって評価が変わってくることもあります。また,担当者が1人であっても,評価基準の境目ぐらいの評価を違ってつけることも出てくる可能性がある事からできるだけ細かく見るようにしています。下の表は,1学期はじめのノート提出の状況と配点です。
実習ノート 各生徒の評価
▲実習ノート 各生徒の評価

 語句の穴埋めなどは,配点を低くしています。自分で考えて記入する部分や実習の部分に点数の比重を置いています。また,表にまとめることにより,生徒が答えにくい部分などを見つけて説明を補足するなどしています。
 生徒のノートには,各ページに評価をA・B・C・・・で記入をしてpracticeの解答と共に返却しています。最終的には学期の最後までに答え合わせを行い,自分で考えるところについても完成させて1学期のノート点数としてつけています。1学期は,実習ノート15ページまでの内容の授業を行い,ノート点40点分,パソコンでの実習課題で50点分,残り10点分が平常点というようになりました。
 実習ノート提出を行った際に,評価以外の集計をとることによって教材としても使用できます。
 例えば,実習ノート9ページでは,「問題解決について考えてみよう。」という内容ですが,生徒は自分でテーマを決めます。ここでも表計算ソフトを使用して下の表のようにまとめました。

応急手当の意識と手順
学祭の出し物
携帯電話の料金について
健康的な生活を送るための食生活
交通事故と交通安全
睡眠不足について
好き嫌いをなくす
どうしたらクマがとれるか?!
何部に入部するか
ニキビ治療・毛穴の黒ずみ治療
早起きするためには
日頃からよく物をなくす
膝が痛い
部活の試合に勝ちたい
ペットの野性化
▲9ページ 問題解決のテーマ

上記のように,身体的な問題をテーマにすることもあるのでソートして生徒には提示しました。自分が調べたテーマだけでなく,いろいろなことをテーマにしていることに気づくようです。
 次の例は,実習ノートの11ページで,「わたしはこれを目指す」という内容です。実際に2年前から高校1年の5・6月ぐらいに取り入れている演習です。はじめの年は,そのまま課題を与えると職業の欄に未定や考え中などの記入が多くをありました。目指す職業がまだ具体的に決まっていない者や他の人にいいたくない者がいるようです。次の年からは,はじめる前に目指す職業がない人は,気になる職業でもよいこととして,必ず1つの職業を記入ように伝えています。その結果,職業の欄に未定や考え中などの記入がなくなりました。ここでも表計算ソフトを使用して下の表のようになりました。



 職業だけでなく,調べた手段も提示することで他の人がどのように調べたかも関心を持たせるようにしました。PCルームで課題を出すので,インターネットを手段とする者が多くなる結果がでてしまうことが残念です。さらに,提示するときには集計をして,次の授業で使用するパワーポイントでまとめるとよりよいものになります。
 実習ノートは,評価のための課題を目的とした使い方が多くなってしまいがちです。しかし,実習部分については,生徒の関心を捉えたつくりになっていると同時に,生徒たちは他の人がどう答えているかという興味・関心も多く持っているので,課題の総評として見本となるものや全体的にどのように答えているかなどの内容を入れることによって,生徒たちに考え方を広げるいい教材となっていきます。

(2)IT・Literacyと演習
 初めに述べたように,高校入学前の中学での情報教育の格差はありますが,特に影響する部分は,実習時の周辺機器やソフトウェアの活用方法です。学習指導要領の内容の扱いには,技術的な内容に深入りしないようにするとあることや,特定のソフトの操作を教科書に載せないことから,アプリケーションソフトの基本操作の習得となる副教材が必要となります。高校の授業で初めから操作説明をすることは,中学で教わった者にとっては退屈で時間の無駄になってしまいます。実際の授業では,IT・Literacyを読みながら授業を行うのではなく,IT・Literacyの使い方を説明してあまり内容の説明をしていません。IT・Literacyの使い方の説明は,アプリケーションソフトで行いたい動作について,目次を見て探してよく読んで作業しなさいという指示ぐらいです。特に知っておいてもらいたい機能を扱うときには,演習の合間にIT・Literacyの載っている箇所を紹介する程度です。ソフトウェアを使ったことがない生徒もいるのですが,グループ学習型の教室レイアウトなので友達が教えたり,または,机間巡視したときに教えたりしていますが,IT・Literacyでほとんど間に合います。
 実際に本校で,IT・Literacyを使用している実習は,次のとおりです。
・第1章第3節 情報伝達の工夫
 簡単なプレゼンテーション作り。
  Power Point XP 編を使用。
・第2章第2節 情報の発信と共有
 情報をまとめて旅行企画書を作成。
  Word XP 編を使用。
・第3章第1節 情報を扱う
 グラフを使用したレポートの作成。
  Word XP 編Excel XP 基礎編を使用
 デジタルカメラの画像の取り扱い
  Photoshop Elements 編
 上記の実習は,いずれも高校1年生の時に行うことで授業以外の生徒会活動や修学旅行の事前学習などに主体的に活用する手助けになると考えています。また,IT・Literacyの課題編については,具体的な生徒にとって身近な内容が載っているので試したくなるものばかりです。
6.おわりに
 教科「情報」については,標準単位数が2単位ということもあり,1人で多くのクラスを持つことが多い点や,校務も学校の成績処理や構内システム管理など大変忙しくなっているのが現状だと思います。実習課題の提出やテストを行うことでその後の処理が大変になりますが,情報という教科の内容が身近になってきたことからも,生徒1人1人の考えなどがまとまっている実習ノートを今後もうまく活用させていきたいと思います。
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