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ICT・Educationバックナンバー
ICT・EducationNo.5

巻頭言
 
ジャーナリスト 野中 ともよ

 こんなに素敵な雑誌があるなんて,びっくりでした。実践例は,多様な,そして真摯な具体例にあふれていますし,セミナーや勉強会を,リーダーシップの音頭をとりながら大変タイのムリーに開催なさっているし…。とても嬉しくバックナンバーを読ませていただきました。

  釈迦に説法とは,このことで,私などが申し上げることは何もありません。が,です。このたびのミレニアム。Y2Kの嵐もなくようございました。,の良い気分に乗じて,暦が人類の背中を押してくれると思い込んでしまう。そして,ズバリ,今は産業革命以来の大革命期であることを認識してしまう。そして,20世紀をふりかえり,断つべきものは断ち,はじめるものはスタートする。その勇気と志を持ってしまうことをおススメしたいと思います。

  ことは「総合的学習」のワクをどうするか,とか「情報教育」で内容をどうしようか,とか「調べ学習」や「共同研究」のテーマは何が一番合うのか等々の討論ではありません。ましてや,コンピュータ教育は,生徒の評価がムツカシイね,などという瑣末な旧パラダイム系の教育マインドでは,もうダメです。

  人類がいまだかてつ持ったことのない技術を手にしてしまいましたのです。このIT革命は,ビジネスモデルも,お手本もないのです。詳述は省きますが,15世紀後半の羅針盤や航海術の発明は,18世紀後半の蒸気機関の出現で,地球のリーダーの座を奪われました。

  僕の羅針盤は世界一で,我が王国の艦隊は無敵なるぞ,とふんぞりかえっていた旧パラダイムの王者は,即敗者とならざるを得なかったのです(ご興味があれば,JAPET No.94をどうぞ)。

  製造業パラダイムで世界一の債権国となった日本丸は,この轍を踏んではつまらない。これは,ビジネスの世界だけの話ではありません。

  教育界こそが,まさに大革命,総パラダイムチェンジの大嵐にみまわれるのだ,と言っても決して言い過ぎではないと思います。

  PCは道具ですし,インターネットのネットワークは通信のインフラでしかありませんが,それが教室という学舎に登場し,導入されたとたんに,日本丸の戦後教育のパラダイムそのものが,大転換を迫られているのです。算盤だったところに,電卓が入ってきたのとは大違い。道具の使い勝手を学習する,という話しではないのです。

  TQC(トータル・クオリティー・コントロール)よろしく,津々浦々同じ教科書を使って子供の品質管理をテッテイして,比較優位の序列をつけて,子供の額に学校名を刷り込んできた,学歴社会という名のバーコード管理は,もう破タンしはじめました。

  社会を支える経済システム全体が,終身雇用も年功序列も,閥もコネも,ことごとく音をたてて崩れはじめています。

  ようやくその人間のナカミが,しかもホンネでの勝負に出られる時代になったのだ,と思います。

  学校という場が何のためにあるのか? 教師という職業にも,厳しく楽しくたりがいのある競争原理が,多分導入されるようになるとも思います。子供は,評価される対象から,創り出す主体を楽しむ存在になるでしょう。

  今日はもう紙面がなくなってしまいました。どうぞ,今までの教師の衣やカクアルベシを脱ぎ捨てて,子供と共に育つ(ちょいとだけ長く人類やってる先輩くらいの気分で)教えて育てる者ではない共育者として,楽習カリキュラムを編んでいただきたいと思います。

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