ICT・Educationバックナンバー
ICT・EducationNo.5 > p22

コンピュータ教育のバグ
勝手に進んじゃダメ!
−コンピュータ実習の進度−
 いささか遅れ気味ではあるが,日本においても,授業で使えるコンピューターがどこの学校にも普及してきた感がある。授業用のコンピュータがあるということは,必然的にコンピュータの実習が行われることになってくる。ところが,この実習というやつが厄介な代物である。殊に実習の進度については,難しい問題が…
一斉に始めて,そして,一斉に終わる
 そもそも学校の授業というやつは,一斉に行う形式が主流である。時間にしても,教える内容にしても,基本的に1 時限の授業というのは,ある一定の進度を決めて行われているのが普通である。そして,こういう時間毎の指導内容を授業の導入・展開・まとめなどと称していたりする。要するに教師の側としては,1時間の授業において,生徒にこの程度は理解させたいとか,このレベルの技術を習得させたいとかいう風に設定しているのである。

  ところが,これをコンピュータ実習の授業にあてはめようとすると,なかなか難しい。たとえばコンピュータの習熟度を高校生の場合で考えれば,ある生徒は,幼稚園のころからコンピュータに慣れ親しみ,小学校・中学校の授業では色々と活用されていた,自宅でも自由に使えるパソコンがあるという者もいれば,逆にコンピュータといってもゲームのための機械くらいにしか思ってなくて,高校に入るまではあまりさわったことがない,自宅ではパソコンはおろかビデオの録画予約を設定するのも家族総動員でないとムリというような初心者もいる。

  このような現状で,コンピュータ実習授業を生徒の利用技術レベルに合わせて行うとオープンエンドな形になってしまうし,一斉授業として内容を設定するとどのレベルまででまとめていくのかが大変難しい。たとえば,「何月何日までに作品を提出しなさい」とか「何分間でどれだけ出来るかやってみなさい」というように明確な到達目標や制限時間を示せるのは,アプリケーションソフトの利用方法についての実習くらいしかない。
試行錯誤は続く
 ということで,コンピュータ実習については,様々な試行錯誤が繰り返されている。コンピュータ実習の実践事例も,いくつものパターンがあるように思う。一つは,一斉授業という形式を捨てて(教師としては結構勇気のいることであったりするのだが),オープンエンドでもかまわない,最低限の技術や知識が身についたら後は自由だという形式。一つは,ありとあらゆる事態に対応できるように,担当者を増やしたり,マシンを工夫したりで,準備万端で実習を行う形式。一つは,コンピュータというものは習うより慣れろだから,とにかくどんどん使わせようという形式。さらに一つは…,とパターンにまとめてみても枚挙にいとまがない。

  そうそう,あと一つ,あくまで一斉授業にこだわり,スイッチを入れるときも,ソフトの起動も,ファイルの保存も,何から何まで同時同業というパターンがある。先にソフトでも起動しようものなら「勝手に進んじゃダメ」と叱られてしまう。でも,本当のところ,こういう先生が「勝手に進んじゃダメ」と言うのは,情報化社会への悲鳴に聞こえるのは私だけだろうか。
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