(1) 変貌する時代
20世紀最後の年はY2K問題で幕を開けたが,最近,マスコミなどで情報技術(IT)革命という言葉を頻繁に目にするようになった。1970年代のマイクロエレクトロニクス革命に端を発するパーソナルコンピュータの普及は,この四半世紀を大きく特徴づけてきた。さらに,数年前にブレークしたインターネットの浸透がこの動きを加速し,社会システムの全領域(政治,経済,文化)にわたって,大きな変革の波が押し寄せている。
日本におけるその兆候の一端は,電子ゲーム機の普及や,ポケベルからケータイに至る若者のコミュニケーションの変化であった。いまや,パーソナルコンピュータの出荷台数がテレビのそれを上回り,携帯電話・PHSの普及率が国民の50%を越え,あらためて時代の変貌が実感される。
(2) 教育への衝撃
ところで,このような変化は「教育」や「学校」に対しても非常に大きなインパクトを与えつつある。直接的には,教育方法や教育内容の革新であり,また一方では,教育システムや制度の見直しも迫られている。2002年度から始まる新しい学習指導要領では,初等中等教育の各段階においてコンピュータや情報通信ネットワーク,あるいはこれを基盤とするマルチメディア環境の活用が謳われ,高等学校では新しく普通教科「情報」が必修として登場する。「教育の情報化」は単に文部省だけの政策にとどまらず,国をあげての重要課題であるとの認識も高まりつつあり,国際的な首脳会談の場の主題としても取りあげられるようになった。
以下では,これまでの5年間の日本におけるインターネットの教育利用の現状や問題点を踏まえて,「教育の情報化」が望ましい結果をもたらすためには何が必要なのかをあらためて振り返り,今後の10年の展望を描いてみる。
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