ブックタイトルICT-Education_No.51
- ページ
- 3/36
このページは ICT-Education_No.51 の電子ブックに掲載されている3ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。
このページは ICT-Education_No.51 の電子ブックに掲載されている3ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。
ICT-Education_No.51
人が対話を通して学ぶ仕組みとICT─21世紀型スキルと呼ばれるものをどう超えるか─東京大学大学発教育支援コンソーシアム推進機構三宅なほみ1.21世紀型スキルへの課題筆者はいま,東京大学の大学発教育支援コンソーシアム推進機構(CoREF)に所属し,20近くの教育委員会と連携して建設的相互作用を引き※注1起こす授業を試みている。人は自らの知力を上げることができる潜在的な能力を有している。例えば,ゴールが共有された状態での他者との対話を通して,それを引き起こすことができる。しかしながら,この力を学習者自身が意識的に活用することは困難である。その建設的相互作用を引き起こすために,ICTは非常に期待できる。ただし,その姿は学びのイノベーション事業やフューチャースクール推進事業などのICTの教育への活用とは異なるものかもしれない。以上の観点から,建設的相互作用を引き起こす学びの仕組みについて検討していきたい。いま社会のなかで私達に求められている力として,21世紀型スキルがある。しかし,改めて21世紀型スキルについて考えてみるとき,その前提として誰かが21世紀型スキルの具体的なあり方を提示し,それに従うことが,そもそも21世紀型スキルなのだろうか。21世紀型スキル,すなわち,この社会をよい方向へ変えていける資質・能力というものは,実はどこかに明確なゴールが設定されているものではなく,使い方がわかったらその先へ発展していくものであり,単に使えるだけでは意味がないものなのではないだろうか。21世紀型スキルを教育で身につけさせるにあたって,教師に問われることの一つとして評価のあり方がある。例えば,ルーブリック評価などで細かな指標を定め,それに基づいて適切な評価をしたとしても,子ども達がゴールを達成することそのものが目標となってしまったら,「5」の評価レベルにたどり着いた途端に,これまで作ってきたルーブリック評価を再構築しなければならなくなる。21世紀型スキルでは,ルーブリック評価を常に作り直すという作業をしなければならず,いずれは評価の方法を抜本的に見直し,子ども達ができること,学びたいことをどんどん取り入れていくような授業形態に転換していかなければならないだろう。そのような授業形態を筆者は「前向き(Working Forward)モデル」と呼ぶ。21世紀型スキルは,結局のところ,与えられた目標(ゴール)に到達すればよいというものではなく,子ども達が自ら探究し,活用していくものでなければならないのではないだろうか。2.前向き(Working Forward)モデルへ(1)前向き(Working Forward)モデルPISAの学力調査テストで上位にいる地域や国々,特に上海や韓国,シンガポール,香港などと日本の順位差がしばしば注目される。しかし「PISA型テストでよい点を取ること」そのものを達成目標とする学び方は「後ろ向き」でしかない。これらPISA上位の国や地域においても学習スタイルは旧態依然のものであり,ICTを導入しているといってもそれだけでは前向きモデルとはいえない。前向きモデルでは,ICTの使い方は当然のこととして,ものごとの「わかり方」や,知識として※注1:筆者およびCoREFの研究活動については,Miyake Naomi Laboratory(http://coref.u-tokyo.ac.jp/nmiyake/)を参照。1