ブックタイトルICT-Education_No.51

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概要

ICT-Education_No.51

情報社会の視点論点進化する情報の共有性と格差化−ネット広告から見る情報の選別と断絶−早稲田大学系属早稲田実業学校楢原毅スマホやタブレット端末が普及して,クラウドコンピューティングによって大量の情報を扱える時代に突入してきた。こうしたなか,インターネット広告の拡大が顕著である。米国のある調査によれば,世界のインターネット広告費は広告市場の約2割を占め,新聞や雑誌を大きく上回ったという。日本も例外ではない。インターネット広告の比率は全体の15%程度まで伸び,テレビの約30%に次ぐ勢いであ※注1る。昨今,日本のインターネット人口普及率は約8割まで微増したが,世代間では格差がある。13歳~49歳までは9割を超えているのに対し,高齢者になるほど下落す※注2る。さらに,インターネット経由の商品購入は,40代までと50代以降では利用率に大きな格差が見られ※注2る。これらが示すことは,若い世代ほどインターネットをよく用い,電子商取引を行う機会も多いということである。一方,ネットショッピングや動画共有サイトを訪れると,関連商品のバナー広告が数多く提示されていることに気づく。また,利用者の購買履歴をもとにして商品を提案するという,プッシュ型広告も目につく。インターネット広告は,インターネット利用者のみに向けた限定性と利用者各自の嗜好や性向を反映するという個別化が図られているのが特徴である。ネットショッピングを利用すると,基本4情報(住所・氏名・生年月日・性別)を提示するだけでなく,メールアドレスやクレジット番号なども登録することになる。こうした履歴は企業にとって,新たな商品の開発や提供への有機的情報になる。その結果,消費者はこれまでのように商品を選択する側から,企業に選別される側にもなり得るのである。蓄積された年齢や性別,趣味,過去の購入商品などのデータは,“あなたにぴったりの○○”,“あなたの好む商品は○○”という広告にカスタマイズされ,ターゲットにされた顧客へと配信されていくことになる。だが,こうした手法からターゲットの外と認識された消費者は,かえって情報の提供から断絶されかねない。高齢者に限らず,従前のテレビや新聞などの広告で素早く簡便に済ませたいという消費者は少なくないからだ。こうした消費者に,差別化する広告配信が新たな情報格差の火種となってはならない。広告という媒体に限らず,企業や行政はほかの媒体の特性も活かして,偏りのない情報提供の場を設けていくことが望まれる。また,消費者もネットを情報源の中心とする行為を自重し,多様なメディアから情報を収集する選択肢を持つことが大切となろう。※注1:電通「2012年日本の広告費」http://www.dentsu.co.jp/books/ad_cost/2012/media.html参照。※注2:総務省「通信利用動向調査」http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/statistics/statistics05a.html参照。30