ブックタイトルICT-Education_No.51

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概要

ICT-Education_No.51

定着したことをどう活用しているか,さらにその先に,どうやって子ども達自身が問題を設定し,探究・解決していくかが重要なのである。この段階に至って,初めて学びはMove Forwardするのである。実は,学習指導要領がその学年で学ぶ内容の上限を定めたものから最低限の学習項目を定めたものという「下支え」にシフトした時点で,日本の公教育でも授業をMove Forwardさせることは可能となっているのだが,研究レベルでも現場レベルでも実践が不足しているのが現状である。(2)テストによる評価の問題点従来の授業のスタイルに単にICTを取り入れただけでは,前向きモデルにはならない。21世紀型スキルで重要視される思考力やコミュニケーション力,創造力などの学習の結果をテストで測ろうとすることにあまり意味はない。教え方によってテストの点は上げられるが,実社会で使える場面はほとんどないためである。私達は学習の結果をテストによって測っている。しかし,テストで測ることを決めた途端に,私達はbackwardで教えていることになる。一つのことができるようになったら,次にできることを,さらにそれができるようになれば,次にできること,と繰り返すことで,あらかじめ設定したゴールに到達するのだが,そこで教師も子ども達も学習することを終えてしまう。本来は,ゴールに到達した先で,学習したことをもとにした活用や探究がなければならない。テストの典型的なモデルとして,次のようなものがある。子ども達のスタート地点は一つである。教師は子ども達の学習の到達点として,60点~80点を設定したとする。先ほども述べたように,私達はテストによってbackwardで教えている。したがって,目標へ到達するまでの認知過程は一本のルートで示されると考えてしまう。この一本道のある地点で,子ども達がどこまで到達しているのかを見るために,本来は見えない認知過程の一点に穴をあけて覗こうとする。その道具こそがテストなのである。穴のあけ方を間違えてしまったら,子どもがどのように考えているのかという認知過程を捉えることはできない。しかし,実際の認知過程では,子ども達は実にさまざまなルートで思考を伸ばしている。穴のあけ方が適切でなければ,私達は子ども達の学びの過程を大きく見誤ることになってしまう。となると,21世紀型スキル的評価というのは,これまでの形成的評価とは異なるものであるはずである。21世紀型スキルにおける形成的評価とは認知過程のルート上のある地点で,次にどこへどう進むかを決めるための方針を決めるものにすぎないのかもしれない。しかし,そうすることで学習が前向きに変わる可能性がある。前向き授業で何をすべきなのか。学習者である子ども達一人ひとりが自分なりに納得のいく答えを作る,作れることを確認していきたいと筆者は考えている。いわゆるできる子,できない子という概念を一度捨て去り,一人ひとりの子どもの認知過程を丁寧に見ることで,教師が想定しているルートとは異なったアプローチで学習を深めている子ども達の姿が見えてくる。こうした子ども達の多様性を残し,活かしていかなければ,教室のなかでの対話による建設的相互作用を引き起こす授業は実現しない。3.対話による建設的相互作用(1)対話による学びとICT学びの過程を捉えるのに最も適した学習方法として,対話がある。答えを作る途中で考えながら話すこと,そのようなやり取りをできるだけ教室のなかで活発に行ってほしいと考えている。ところで,会話の場面で聞き手の考えていることが吹き出しのように表示されるようなことがICTによって実現されないものだろうか。聞き手が話し手の内容を受けて,単に頷くだけでなく,2