ブックタイトルICT-Education_No.51

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概要

ICT-Education_No.51

わかったつもりで終わりにするのではなく,わかったその先にある学びを促していきたい。そんな授業が日常的に行われればよい。前向き授業とICTは相性がよい。知識や理解は一般的な大人の社会では習得→活用→探求が短い時間で何度も起きている。知識を獲得する過程のなかで,まだ十分に知識として習得していないながらもそれを活用していくことで,結果的に知識の習得を促し,理解を深めたり新たな疑問が出てくるようになる。教師はその学習の過程を捉え,多様な形でいろいろな教材を手元に取り寄せ,それらを組み合わせて支援をしたいと考える。教師自身が想定したゴールに近づけつつ,学習者が想定したゴールを超える可能性が出てくれば,そのための心構えをしなくてはならない。ところが,従来の教科書やノートでは,そのような流動的な変化を捉えることは困難である。そこで,しっかりしたICT基盤によって学習の過程を可視化することで,本人だけでなく教師も適切に評価をし,次の学びへと導くことができる。ICTを前向き授業にうまく組み込むことで,このような自己管理型学習能力を自然に育成することができる。(2)対話による建設的相互作用他者との対話を通して学ぶ能力,言い換えれば他者との相互作用を通して自らの考えを変え,その適用範囲を広めていく能力は,本来人間に潜在的に備わっている能力である。私達はさまざまな経験を踏まえ,その経験則をもとにさまざまな知識や技術を獲得している。ところが,しばしば学校の授業で習う科学的な知識と自分自身の経験則から得た知識が合致せず,理解を妨げていることがある。例えば,ボールを蹴れば一定の速さで転がり始め,いずれは止まるということは毎日の遊びのなかで経験し,知識や技術として習得していく。ところが,学校の理科の授業では,物質に一定の力を加えると一定の速度でそのまま動き続けるということが提示される。この違いをどうすればよいのだろうか。ここのところで,自分がわかっている経験則と授業での実験の結果を踏まえ,自分なりの解釈というものを他人に説明しながら,あるいは他人の考えを参考にしながら,さまざまな考えを統合させ,納得させるという作業,すなわち,対話による協調的な活動が必要になってくるのである。このときに教師がさまざまな例を出しながら,いわゆるわかりやすい説明を行うことには注意する必要がある。なぜならば,子ども達が経験則などから知っている日常的で素朴な理論を科学的な概念へ発展させるためには,子ども達自身が考えて言葉にすることが必要だからである。教師からわかりやすい説明を受けてわかった気になっていると,科学的概念と日常のできごとを結びつけることができないままになり,結局のところ,テストまでのほんのわずかな期間だけしか覚えていない単なる暗記となってしまう。教師がいくら説明を費やしたところで,子ども達自身が,自らの言葉で自ら納得したMy storyを確立し,それをもとに話をしなければ,日常的なできごとを科学的概念まで昇華することはできない。では,どういう対話を行えばよいのだろうか。ここで重要なのが建設的相互作用である。本稿では建設的相互作用を,そこに参加する人達の考えの質がよりよくなる方向で変化する相互作用と定義する。対話によって複数で問題を解決するといっても,複数いるから問題に対する処理能力が上がるということではない。ここで期待されるのは,対話によって話し手自身に自分の考えを見直す機会が訪れ,より質の高いものに変化するということである。対話の中で自分の考えを相手に伝えようとするが,なかなか相手はわかってくれない。なぜならば相手もまた別の考えを持っているからである。そこで,相手がわかるように,自分の考えを見直し,言い換えたり噛み砕いて説明をしたりといっ3