ブックタイトルICT-Education_No.51
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ICT-Education_No.51
たことを試みるなかで,自分の説明に不足していることに気づいてそこを修正しようとする。すると,今度は相手が自分の解釈について説明を始める。その説明を聞くことで相手の考えを理解しようとするなかから,自分の考えの修正に役に立つ部分を引き出し,自分の考えを修正することに使う。ともすれば,相手の考えていることを,説明を試みている本人よりも視野を広くして見ることができる。このようなやり取りを相互に繰り返すことで,自分の考えを作り直し続け,後に新しい問題に直面しても応用できる,より抽象度の高い理解が生み出される。ただし,このやり取りをいくら繰り返したところで,厳密には各自がオリジナルなアイディアを深掘りしていくだけで,同じ答えに収斂することはない。「相手はああ言ってはいるが,自分自身の考えはこうである」という,My story differentothersを組み立てている。これは教師の立場からすると不安な状況ではあるが,対話による建設的相互作用を引き起こすことで子ども達一人ひとりの学びを確実に保障することができる。だからこそ子ども達一人ひとりがこの先も自ら学習を進めていこうという雰囲気,いわゆる「その気にさせる」こともできるのである。4.事例による検証(1)事例1:Knowledge Forumでは,実際に対話による建設的相互作用を引き起こしている授業について,いくつかの事例を紹介していきたい。海外の事例として,カナダのトロント大学の大学研究所附置学校(Ontario Institute for Studiesin Education)において,BereiterとScardamariaが中心となって行っている研究を見てみたい。この学校で行われている授業スタイルは徹底した前向き授業であり,そのような授業ができる指導力を持った教師を集めた学校経営を行っている。教科の内容はオンタリオ州の規準に沿っているものの,その教科で学習する内容を子ども達自身が建設的に学び,問いの発見や情報収集に留まらず,自分の考えを発表していくことを大事にしている。問題の複雑さそのものを敵にせず,むしろ友達として向き合っていく。教室では「考え育て」というものを常に行っている。すなわち,実社会や専門家が用いている科学的概念や社会的な問題解決を子ども達に積極的に提示して,授業を進めていくのである。入学して間もない1年生の授業について見てみよう。あらかじめ教師は子ども達の活動や会話を観察し,どんな話題だったら子ども達が集まって対話をするのかを丁寧に探っていく。その結果,1年生の始めの頃だと秋なので「葉っぱがなんで秋になると赤くなるのか」という話題が採用される。子ども達は掲示板に自由に自分の意見を書き込んでいく。このとき,「書き出し」が与えられている。自分の考えを書きたいのならば「Mytheory is」,「What I need to learn is」などさまざま揃えてある書き出しのなかから,好きなものを選んで書く。何を,どう書くかは子ども達に任されている。子ども達は最初,さまざまなMy theoryを提示してくれる。「寒すぎるから葉緑体が働けなくなる」,「葉が落ちると葉緑体が落ちてしまう」,「葉だけではなくて,根が一緒になって葉を緑にする」などのMy theoryが出されたり,図を描いて説明を試みたりする子どもが現れるようになる。ところで,この授業での学習目標は,植物の植生にはサイクルがあることを科学的な用語を用いて子ども達自身の言葉で語れるようになることであった。そこに子ども達の話し合いを持っていくために,教師は,例えば子ども達に対して「みんなはどんな書き出しで自分のアイディアを書いているのかな?」と問いかけ,実際に子ども達が使っている書き出しの頻度をグラフにして表示して見せる。4