ブックタイトルICT-Education_No.51
- ページ
- 8/36
このページは ICT-Education_No.51 の電子ブックに掲載されている8ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。
このページは ICT-Education_No.51 の電子ブックに掲載されている8ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。
ICT-Education_No.51
ども達一人ひとりが書き留める。これをクロス・トーク活動という。答えの交換によって各自が自分の表現の質を高める活動である。それぞれの活動では,どのようなことが起こり得るだろうか。知識構成型ジグソー法を取り入れた高等学校の生物の授業を例に,具体的に子ども達の対話の様子を捉えてみたい。この授業では,「葉が緑色なのはなぜなのか」という課題について,「色はどうして見えるのか」,「葉緑体と光吸収スペクトル」,「エンゲルマンの実験」の三つのエキスパートグループに分け,それをジグソー法によってこの三つの部品となる知識を組み合わせて,課題に対する答えを自分達で構成していき,最後にそれぞれのグループで作り上げた考え(答え)を発表し合うという活動を行った。授業の前後で同じ課題に対する答えを記入させ,その知識への理解がどのように変化したかを測った。すると,最初は「葉が緑色なのはなぜなのか」という問いに対して,授業前は単に「葉緑体のせいだから」と答えていた生徒が「光合成には緑色を使わないので,それが反射して葉は緑色になる」といったことを記述できるようになった。明らかに記述の量や質が向上し,授業のポイントに対する理解も深まっているのである。ジグソー法のそれぞれの活動を行っている最中の対話の様子を分析すると,エキスパート活動ではグループ内で同じ資料を検討するため「みんな同じわかり方をしている」と感じやすく,活発な対話は起こりにくい。ところが,ジグソー活動に移るとエキスパート活動ではほとんど発言していなかった生徒が活発に話をするようになり,それぞれの資料に書かれている内容の解釈やそれらを統合して出せる答えを巡って,対話が活発に行われるようになる。また,答えを説明するためにより専門的な用語を使うようにもなる。クロス・トーク活動ではほかのグループの発表を聞き,そのなかで出てきた「的を射た表現」を無意識的に自身の説明に取り入れようとする。同様に高等学校でICTを効果的に取り入れた授業として,数学の実践例を紹介したい。課題として出されたのは,「y=3sin2(θ-π/4)のグラフを描け」というものであり,大半の生徒は最初は拒否反応を示す。まず,エキスパート活動では「y=sinθのsinの前の定数を変化させるとグラフはどうなるか」,「y=sinθのsinとθの間の定数を変化させるとグラフはどうなるか」,「y=sinθのθの値を変化させるとグラフはどうなるか」という三つのグループに分け,それぞれにGRAPESというグラフを描くためのフリーソフトを使って,グラフの変化を確認させ,その変化を「言葉で表現すること」を求める。ソフトを使うのは時間にして5分ほどであるが,この活動中に生徒はグラフの変化をどう説明するかということについて,対話を活発に行うようになる。そしてジグソー活動ではそれぞれのグループでグラフがどう変化したかを持ち寄り,手書きでグラフを描かせる。クロス・トーク活動では「y=3sin2(θ-π/4)のグラフを描け」という問いに対する答えのグラフを見せながら,そのグラフがy=sinθのグラフをどのように変化させたものかを言葉で説明させる。「sinθの式をy軸上に沿って3倍,θ軸上で周期を2分の1倍にして,できたグラフをシータ軸上で-π/4だけ横にずらす」という答えを導き出すことができた。この授業を行った教師は,生徒の変化について「全員がこういった式を見たとき,頭の中でグラフの形をイメージできるようになったので,後が楽だった」と報告している。(3)前向き授業における評価このような事例から,前向き授業における評価についても私達は検討を加えていかなければならないだろう。知識構成型ジグソー法などの手法を取り入れた前向き授業では,同じ課題や問いを授業前と授業後に聞くことで,その変化を捉えてい6