ブックタイトルICT-Education_No.51

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概要

ICT-Education_No.51

くという方法を取っている。その際,最初の答えに対して最後の答えが子ども達一人ひとりにとって,部品となる知識を統合した自分自身の言葉によるストーリーとなっているかを評価のポイントとしている。さらに21世紀型スキルを意識し,前向きの新しいゴールに合わせた評価のポイントとして,知識として長期的に保持され,他教科での学習やさまざまな文脈で再現することができるかという可搬性(Portability),他単元や他教科,さまざまな文脈などに合わせて活用できるかという活用可能性(Dependability),自発的な学習が継続されるか,新しい問いや疑問を作り出すことができるかという発展的持続性(Sustainability)が挙げられる。実際に筆者が観察をしている学校では,子ども達が学習したことを長期にわたって保持しているようになったことや授業が終わった後にその続きや応用を考えてくるようになったこと,新しい問いを子ども達自身が作り出すようになるなどの変化が見られる。5.結論に代えて(1)前向き授業がもたらす学びの変化前向き授業を教室に取り入れることで日本の教育はどのように変わるのだろうか。ICTによって学びのプロセスが可視化されることで,子ども達は自分がわかっていることをわかりながら語る,わかっていることを統合させて自分の答えを作る,それを楽しいと感じる変化が生まれる。できない子が化ける瞬間が前向き授業では頻繁に起こる。前向き授業は教師や学校組織にも変化をもたらす。教科や校種の違いを超えて教師間での対話や協調の場面が増え,教材,評価方法,子ども観の捉え直しが起こる。また,これを主導する立場にある教育委員会でも,教員に対する研修やほかの教育委員会との連携が活発になっている。学校現場へのICT基盤の整備がこうした動きをより一層加速させるだろう。最終的には,これまで一方的に教えることが中心であった学習科学観そのものが,教える側が授業のなかで子ども達の学びを学びつつ次の授業を展開するといったものに劇的に変化するだろう。人が学んでいくということは一体どういう過程なのか。4年間のCoREFの取り組みを通して,私達研究者が教師や子ども達に関われることも随分変わってきている。もしかすると,これまで彼らがやろうとしていることに対して,研究者は十分に応えきれていなかったのかもしれない。(2)対話による学びを支えるICT基盤の構築子ども達の学習過程での発話や記述,メモなどをすべてつぶさに記録して,授業が終わった放課後には教師がその結果を分析し,次の授業作りに役立てられるようなICT環境が実現しないだろうか。その結果をもとに,さまざまな立場の人が新しい授業提案や教材作りに関わり,教育現場を強力に支援できないものだろうか。子ども達の学習の過程を分析し,教師を支援する新しい職業の開発も考えられる。膨大な子ども達の学習の履歴をビッグデータとして分析し,活用する未来の教室の姿を,筆者は想像せずにはいられない。学びとは,人と関わり合いながら賢さを育て続けることである。一人ひとりが自分の考えを大切にして,まだ誰も解けない困難な問題に対していろいろな人のいろいろなアイディアや考え方を統合して自分なりの答えを出していく。一人ひとりが信頼される発信源となり,相互作用的に学び合いながらよりよい社会を育てていく。私達を待っているのは,そんな21世紀の多様なネットワー※注2ク社会の姿なのである。※注2:本稿は2013年6月2日に開催された第59回ICTE情報教育セミナーin東京での講演をもとに書き下ろしたものである。7