ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play

概要

ICT・EDUCATION 2018特別号

う伝えるかに興味があるんです。『大人のピタゴラスイッチ』はほとんどが情報の科学で、デジタルやプログラム、モデル化とは何かをテーマに、それをいかに表現するかに取り組んでいます。アルゴリズムにもすごく興味があって、クイックソートやマージソートの面白さをどうにか伝えたいな、と思って表現しています」 映像を通じてマージソートをさらりと学べてしまう「しめじソート」をはじめ、目から鱗が落ちる伝え方の工夫は、思わず感心させられるものばかりだ。このように、映像が持つ力を最大限に駆使し、教育の現場に活用している佐藤氏だが、そもそも何をきっかけに映像に着眼するようになったのだろうか。「実は40年近く前、甥へのプレゼントに買ったルービックキューブがきっかけなんです。試しに自分でもやってみたところ、全体の構造が頭の中に立体的な絵として浮かんで、概念的な方法で6面が解のステップ表と同じものが書かれた床の上でその通りの動きをさせる。すると、全員がぶつかることなく動くことができる、というものだ。これが、佐藤氏が初めてアルゴリズムを形として表現したもので、『ピタゴラスイッチ』の始まる3年も前のこと。「敢えて個性を自分で抑制して動いてみると、なぜかすごく可愛いし、切ないものが生まれた。これもひとつの表現だ、ということを伝えたかったんです」 そうした佐藤研の活動にNHKのディレクターが着目し、新しい幼児教育番組を一緒に作りたい、ということで生まれたのが『ピタゴラスイッチ』である。さらに、スペシャル版として『大人のピタゴラスイッチ』も誕生し、世代を問わず人気を集めている。「僕自身、情報をどう作るか、どけたんです。図で物事を思考するというのはそのときが初めての体験で、それをきっかけに映像が頭に浮かぶようになりました」 佐藤氏がこれまでに手掛けてきたテレビCMは400本以上。『ピタゴラスイッチ』も16年目を迎え、膨大な数の映像を制作してきた。それらがなぜ、これほどまでに多くの人々の心を捉えるのか。その理由は、独自の方法論や手法にある。「例えば僕がCMを作る時は、従来のやり方と違って〝音から作ります?。音は時間を伴うし、実は映像よりも意味を担うことが多いのです。その根底にあるのは、人間に元々備わっている認知能力です。認知能力とは、物事をアルゴリズム体操や行進の原点となった「ステップ表」と、映像を見ながら当時を振り返る佐藤氏。佐藤氏のアルゴリズム表現は、ここから始まった。見る人を夢中にさせる〝佐藤雅彦的?映像の作り方6