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概要

ICT-Education_No.52

人間として他者と共に生きることを学ぶ教科「情報」東京農業大学/前世田谷区教育委員会教育長若井田正文1.「学習:秘められた宝」『学習:秘められた宝』(Learning:The※注1Treasure Within)(以下;「秘められた宝」)は,ユネスコ「21世紀教育国際委員会」の報告書である。平成8年(1996年)に報告され,当時,21世紀の主要な教育問題を広く展望すると共に,21世紀の教育における「学習の四本柱」を掲げている(図1)。学習の四本柱(The four pillars of education)○知ることを学ぶ(Learning to know)○為すことを学ぶ(Learning to do)○(他者と)共に生きることを学ぶ(Learning to live together,Learning to live with others)○人間として生きることを学ぶ(Learning to be)▲図1学習の四本柱私は,NHKから相談を受けた。「NHKではテレビ放送でパソコン画像を送りたいと考えている。まずは,教育テレビの『数学』が試行しやすいと判断した。協力してほしい」というものであった。その結果,薄い緑色の背景の中に,線と文字で,1単位円とx軸,y軸が描かれ,2その円周上を点Pが動き,3原点と円周上の点Pが線分(動径)で結ばれ,4動径がx軸の正の方向となす角θが表示され,5点Pの座標が(cosθ,sinθ)と表示されるという,これだけのプログラムをBASICで作成してオンエアすることに成功した(図2)。yθOP(cosθ,sinθ)xlこの四つの学習の柱は示唆に富み,報告書が書かれてから20年近く経った現在においても,まったく色あせていない。知識基盤社会に生きる私たちは,変化の激しい社会の中で,つねに学び続け,学んだことを実践に繋げ,多様な文化や言語をもった世界の人々と共に生きていくことが求められている。まず,高等学校の教科「情報」について,この「学習の四本柱」の視点から考えてみたい。(1)知ることを学ぶ(Learning to know)いまから約30年前の昭和59年,NHKテレビの高等学校実力養成講座「数学」の講師をしていた▲図2BASICで作成され,放映された図(イメージ)当時のことを思い出すと,NHKでさえもその程度だったのだと,改めて不思議な感動を覚える。また,平成3年,私は,東京都教育庁の指導主事をしていたが,学習指導要領の改訂によって,中学校「技術・家庭科」にはじめて「情報基礎」というコンピュータの領域が入ることとなり,東京都の公立中学校で技術分野を教える全教員を対象とした研修を担当した。その当時,まだインター※注1:ユネスコ編天城勲監訳1997『学習:秘められた宝』ぎょうせいまたは,UNESCO(http://www.unesco.org/delors/)を参照。1