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概要

ICT-Education_No.52

sAccessでは実装していません。sAccessでは,操作結果をCSV形式のファイルに書き出す機能がありますので,実習を行う場合はそちらを利用して別途表計算ソフト等で行うことになります。実習では,RDBの基本操作である「選択・射影・結合」を意識させる課題を多数準備して,学習者が自分の理解度に合わせて課題をこなすというスタイルが有効です。例として,実際に著者を含む開発グループが行った実習を紹介します。最初はsAccessの操作に慣れることを目的に,検索エンジンなどで直感的にも理解しやすい選択操作から,「時間帯が“昼”の売上レコードを取り出す」といったRDBの基本操作と一対一に対応する命令を入力させ,同じ要領で射影と結合の操作を行わせます。結合操作は具体的に何が起こったかが見た目ではわかりにくいので,まずは全員で一斉に結合命令を実行させて,「二つのテーブルが,どういうルールで結合しているか」を観察,あるいは相談させるとよいです。基本操作をsAccessでどう行うか理解した後で,次にそれらの操作を一つあるいは複数用いる,実習課題の実施を指示します。「売上データのテーブルから,“4/1”,かつ“朝”の時間帯の売上げレコードを取り出す」といった,文章をたどればそのまま対応する命令が思いつきやすいものから,最終的には「熟年女性が最も多く購入しているメーカーの名称を表示せよ」など,命令をどう組み合わせれば要求されるデータが取得できるか,生徒自身で試行錯誤しなければならない課題まで用意しておきます。sAccessでは同じ命令に多くの別名を用意する(例えば選択は「選ぶ」「抽出」「セレクト」でも可)など,できるだけ文法的なつまづきが少なくなるように工夫していますが,それでも操作に戸惑ったり命令の構成に悩む生徒がしばしば出てきますので,適宜アドバイスを行います。その後実習課題の結果を,最終結果のデータリスト(をダウンロード出力したCSV形式のファイル)と,そのときのコマンド列一式も合わせて報告させます。どういう流れで望みのデータを取得したのか,試行錯誤の過程はコマンド列から確認できることも多いです。この課題を通して,生徒がどこまで理解したのかを把握し,後の授業でその結果についての説明を行います。4.現状と今後sAccessは2013年に公開して以降,現在まで高校,また大学でも,非情報系の学生を対象とした情報基礎教育で利用いただいており,いずれの現場からも「過去は使い方を覚えるだけで終わってしまっていたデータベース実習で,学習者が適切なデータ操作方法を考えるところまでスムーズに行えた」との評価をいただいています。同時に,それにともないさまざまな改善要望も出ており,継続的にツールの改善を行っております。細かな不具合の修正以外に現在行っている大きな改良点の一つに「クラス管理」機能があります。クラス単位で同一のデータベースを同時に編集・操作する実習の実現,クラス内学習者のデータ操作状況を一括で確認できる機能の提供,またプリセットDBを各教員がカスタマイズできるようにする機能の実現などを予定しています。また,データベース設計の実習を支援するツールも別途開発を行っており,sAccessとの統合によりデータベース実習の選択肢をさらに充実させることを目指しています。sAccessは現在公式サイトにて,誰でも自由に利用できます。まだまだ発展途上のツールですが,ぜひお試しいただければと思います。授業でお使いの際には,ご意見やご要望などいただけますと,なお幸いです。・sAccess公式サイトhttp://saccess.eplang.jp/29