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概要

ICT-Education_No.52

情報社会の視点論点ビッグデータの汎用性と問題点−個人情報はどこまで守られるのか−早稲田大学系属早稲田実業学校楢原毅企業などが蓄積する大量の情報,ビッグデータ。膨大なデータを目的に応じて整理,分析すれば,ビジネスや日常生活を変えるデータベースになる。スマートフォンなどの高度な情報通信技術が浸透すると,取り交わされる個人データは集積されていく。日頃,私たちはネットを閲覧し検索する。物品を購入するために必要項目を入力することもある。非接触型ICカードで移動し,クレジットカードで取引もする。こうした個人の消費動向や趣味,関心などさまざまな行動形態を示す「パーソナルデータ」は企業にとって宝の山となる。この背景には,ハードディスクの性能向上,安価に処理・分析できる環境の整備,大量データの分散処理が可能なソフトウェアの開発がある。だが,国内でビッグデータを活用している企業はまだ少ない。ビッグデータの専門の人材が不足して※注1いるためだが,今後急増するとの予測もある。一方,こうしたデータが誰のもので,どう利用されるかが懸念されている。すでにクラウド上に大量のパーソナルデータが蓄積されているが,これらは発信者の所有とは言い切れない。各サービスの利用規約では,事業者の帰属としているところが多く,利用者の承諾や通知なしに改変や配布するなどの,広範な権利を認めている。個人のプライバシー保護との線引きも曖昧である。現行の個人情報保護法では,個人情報を「特定の個人を識別」できるものと定義し,これらの情報を第三者に提供する場合は本人の同意が必要と規定している。だが,抽象化や匿名化した情報も,他の情報と照会することで個人を特定できる可能性がある。個人情報保護法はビッグデータ時代に対応できていないのである。そこで総務省などはパーソナルデータの利用・流通の基本理念や原則をまとめた。消費者に,二次利用を認める個人情報を選べるしくみを設け,企業にデータの取得を最低限に留め,第三者への提供の有無などに関する規約を作成させることを柱とした。国際的にも「プライバシー・コミッショナー制度」とよばれる第三者機関の設立を検討している。政府のIT総合戦略本部はパーソナルデータの運用を監視する第三者機関の設置など,個人情報保護法の※注4改正に向けた議論を始めている。※注2※注3個人情報保護法の成立から10年。ルールが実態に即していない現状から,法改正を視野に入れ,プライバシー保護の配慮と商業目的のデータ利活用を促進する制度・設計を進めようとしている。ビッグデータの自由な流通と規制のバランスは,しばらく試行錯誤が続くようである。※注1:IDCJapan「国内ビッグデータテクノロジー/サービス市場予測を発表」http://www.idcjapan.co.jp/Press/Current/20130826Apr.html※注2:総務省「パーソナルデータの利用・流通に関する研究会報告書」http://www.soumu.go.jp/main_content/000231357.pdf※注3:総務省「諸外国の現状」http://www.soumu.go.jp/main_content/000150899.pdf※注4:内閣府「パーソナルデータの取扱いルール整備に向けて検討すべき論点」http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/pd/dai1/siryou3_2.pdf30