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概要

ICT-Education_No.52

た表現やコミュニケーションについて学び,情報社会の課題と情報モラルなどについて学ぶのであるから,「他者を発見する」機会が多いのである。情報は世界を結ぶ。教科「情報」の先生方には,生徒たちに多様な文化や言語の他者を発見し,共に生きることについて(Discover othersとLivewith othersについて)学ぶ機会を与え,世界の人々と共に生きる,自立した社会人を育てているのだという明確な意識をもって授業に臨んでいただきたいと願っている。(4)人間として生きることを学ぶ(Learning to be)教育という営みを一言で述べれば,人類が獲得してきた知識や智恵を体系立てて教えると共に,人間としていかによりよく生きるべきか,ということを自ら考え実践する力を育てる営みである。高等学校で教えるすべての教科も,究極的にはそこに結びつく。教科には,それぞれ学習指導要領で定められた目標があり,内容があるが,教育基本法を持ち出すまでもなく,教育は人格の完成を目指して行われる営みであり,Learning to beに他ならない。将来の社会を担う現代の生徒たちが,情報社会のしくみや特質を理解し,情報社会において人間としていかに生きるかを学ぶ,絶好の機会を与えることができるすばらしい教科が「情報」なのである。このことを,教科「情報」の先生方に十分自覚していただきたいと思う。そのことは,とりもなおさず,先生方自身が,この情報社会の中で人間としていかに生きるかを問い続け,実践することに他ならない。身近な先生方が生徒たちのモデルなのである。※注2司馬遼太郎氏は『二十一世紀に生きる君たちへ』という文章の中で,「私は,人という文字を見るとき,しばしば感動する。ななめの画がたがいに支え合って,構成されているのである。」と述べている。人がたがいに支え合って生きているからこそ,最低限の決まりとして規則や法律があり,それらの隙間を埋めるようにモラルが必要であることを学ぶことは,教科「情報」だけに限らない。しかし,そのことを情報社会との関係において語ることは教科「情報」の得意とするところである。教科「情報」が,人間としての理想をもって情報社会の中でいかに生きるか,という問いを生徒たちに問いかけることのできる教科であることを,先生方は誇りに思い,授業を実践していただきたいと願っている。2.中学校における情報教育(1)PISA(生徒の学習到達度調査)2012まず,OECDのPISA2012の結果を少し見てみたい。PISA2012の結果については,国立教育政※注3策研究所編で『生きるための知識と技能5』が出版されている。ご存知のようにPISAは,義務教育終了段階の15歳の子どもがもっている知識や技能を,実生活のさまざまな場面でどれだけ活用できるかを測る調査である。読解力,数学的リテラシー,科学的リテラシーの3分野について調査している。第1回の本調査は2000年に行われ,私も数学的リテラシー調査の国内専門委員を務めていた。PISA2009から国際オプションとして,はじめてコンピュータを使用した読解力調査を実施した。この「デジタル読解力調査」について,国立教育政策研究所の「PISA2009年デジタル読解力調査※注2:歴史小説家の司馬遼太郎氏が子どもたちに向けて書いたエッセー。大阪書籍発行の国語教科書に掲載された。司馬遼太郎記念館Webサイト(http://www.shibazaidan.or.jp/world/)参照。※注3:国立教育政策研究所2013『生きるための知識と技能5 -OECD生徒の学習到達度調査(PISA)2012年調査国際結果報告書』明石書店3