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概要

ICT-Education_No.52

「社会と情報」「情報の科学」両科目の開設に向けて─生徒の特性に合わせた情報教育を目指して─北海道小樽潮陵高等学校佐々木寛hirochi@hokkaido-c.ed.jp1.はじめに本校は昨年に創立110周年を迎えた道内で3番目に古い歴史をもつ学校である。北海道教育委員会が実施する「地域医療を支える人づくりプロジェクト」の指定校(道内で指定校は9校)でもあり,9割以上の生徒が大学へ進学する。情報科は旧課程では「情報A」を1,2年次に1単位ずつ分割履修していたが,新課程を機に2年次2単位の開設となる。また,2年次から文系と理系・医進類型コース(医進類型選択者は理系クラスに含まれる)に分かれてクラス編成されるため,より各コースの生徒の特性に合わせた授業を展開できるよう,文系クラスでは「社会と情報」,理系クラスでは「情報の科学」を開設する。ここでは,本校の新課程での情報科の指導方針をまとめた。2.目指すべき方向性情報科の指導に携わるようになってから感じるのは,高校生のIT機器を使いこなす能力と情報収集力の高さである。流行に対するアンテナは鋭く,教師の知らない間にクラスや部活動でLINE等のコミュニティが立ち上がり意見交換をしはじめる。また,最新ソフトやバージョンアップへの対応力は抜群で,さまざまなアプリを自在に使いこなしている。しかし,そこには情報技術に対する深い理解や人生経験なしに,直観的に使いこなしてしまう危うさがある。そんな高校生だからこそ,目新しいソフトの使い方だけを追うのではなく,最新技術の根底にある基礎理論を理解させ,今日の情報社会を支える技術を,しっかりとしたイメージをもって活用できる確かな力を身につけさせる必要がある。そのために基礎理論の指導内容を充実させると共に,情報を正しく安全に使いこなすための情報モラルを身につける指導を目指している。3.両科目共通の取り組み(1)「痛快!コンピュータ学」情報の基礎理論を学ぶためには,ハードウェア・ソフトウェアに関する知識やネットワーク,2進数の理解が欠かせない。それらを単に覚えるのではなく,歴史的背景や科学者たちの物語を通してドラマチックに学ばせたいという思いから,現在も副読本として坂村健先生の『痛快!コンピュータ学』(集英社文庫)を全生徒にもたせ,授業の関連分野の予習として読ませている(図1)。『痛快!コンピュータ学』目次関連する授業内容第1章コンピュータ学へようこそコンピュータの特性第2章20世紀を変えた情報理論2進数とディジタル第3章戦争がコンピュータをコンピュータの歴史つくった第4章0と1のマジック・プー論理演算ル代数第5章プログラムプログラムコンピュータとの会話術アルゴリズム第6章世界を変えた小さな「石」ハードウェア第7章マシンと人間の架け橋「OS」OS第8章インターネットは「信頼の輪」ネットワーク第9章電脳社会の落とし穴情報セキュリティ第10章コンピュータよどこに行く?ユビキタス社会▲図1『痛快!コンピュータ学』と授業の関連毎回その確認として小テストを実施しているが,本書を利用しているねらいはきちんとした目的意識をもたせるための動機づけである。本書は,理解しておくべき情報理論に関して,さまざまなエピソードを交えながら,おもしろく,わかりやすく解説されており,情報社会を支える技術の発展に感銘を受けながら体系的に学んでいくための道標として活用している。2002年刊行のため,時6