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概要

ICT-Education_No.53

高校生とスマートフォン─情報教育ができること──第62回ICTE情報教育セミナーin武蔵大学─講演者千葉大学教育学部藤川大祐記録日本文教出版編集部2014年5月18日開催の「第62回ICTE情報教育セミナーin武蔵大学」では,千葉大学教育学部の藤川大祐先生による講演が行われました。以下の報告は当日の記録をもとに日本文教出版編集部にて整理したものです。1.はじめに2009年に施行された青少年インターネット環※注1境整備法など,日本ではこれまで,青少年のインターネット利用に対して,国・民間レベルでさまざまな取り組みがなされてきた。その方向性や成果は,現在でも高く評価できるものである。しかし近年,スマートフォンの爆発的な普及,ゲーム機,携帯音楽プレーヤー,タブレット端末などからのインターネット利用が高校生の間でも当たり前となり,現行制度では十分に対応できない状況が生じつつある。藤川氏は講演の中で,スマートフォンをはじめ,日々刻々と変化する高校生のインターネット利用の実態に触れ,学校教育としてどのような対応が必要になっているのかを考察した。2.フィルタリング加入率の低下(1)各団体の対応と成果青少年インターネット環境整備法によって,保護者の申し出がない限り,携帯電話事業者には,18歳未満の利用者に対してフィルタリングを提供することが義務づけられた。2004年頃から携帯電話事業者各社ではフィルタリングサービスを提供していたものの,ほとんど利用されてはいなかったが,この義務化の流れによってフィルタリング加入率が飛躍的に増加し,青少年の有害情報へのアクセス防止にかなりの効果を発揮することとなった。それと同時に,第三者機関としてモバイルコンテンツ審査・運用監視機構(以下;EMA)が発足し,EMAの認定を受けたモバイルサイトについては,標準的なフィルタリングでブロックされないようなしくみが整備された。GREE(グリー)やmobage(モバゲー),mixi(ミクシィ)といった,青少年に人気のあるサイトを運営する事業者では,EMAから認定を受け,不適切な投稿などがないか常時監視する体制を築いている。また,学校教育でも,学習指導要領で情報モラル教育の推進が明記され,小学校段階からの情報モラル教育,インターネット利用に関する指導が行われるようになった。都道府県ごとに学校ネットパトロールも行われ,不適切な投稿が発見されれば,行政と学校が連携して対応できるような体※注3制が整えられた。※注2このような取り組みが進んだ結果,インターネットの利便性を確保しつつ,子どもたちを有害情報や犯罪から守るということについては,一定の成果が上がってきたと言える。(2)青少年のインターネット利用環境実態調査ところが,ここ数年,フィルタリングの加入率※注1:同法の詳細については,内閣府「青少年インターネット環境整備法等について」(http://www8.cao.go.jp/youth/youth-harm/seibi_law/)を参照。※注2:詳しくは,モバイルコンテンツ審査・運用監視機構(http://www.ema.or.jp/ema.html)を参照。※注3:さらに,滋賀県大津市のいじめ自殺事件をきっかけに2013年に成立した「いじめ防止対策推進法」では,インターネットを通じて行われるいじめへの対策についても各学校に求め,いじめ防止に対しての組織的な取り組みを義務づけている。1