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概要

ICT-Education_No.53

モデルを理解させることも重要である。無料のサービスを利用するユーザーは,メディアの商業性について意識を持ち,意図せぬ消費を抑制できること,依存的な利用をつねに警戒し,長時間の利用にならないようにコントロールできることが求められているのである。こうした場面で重要になってくるのがメディアリテラシーである。メディアリテラシーとはメディアをクリティカルに読み解き,主体的に使いこなす力のことである。「メディアは構成されている」というメディアリテラシーの軸となる考え方と共に,メディアの商業性に関する洞察が問われる。「なぜソーシャルゲームは無料で遊ぶことができるのか?」という視点は,なぜ民放テレビは無料で放送されているのか,なぜ検索サービスは無料で検索が可能なのか,巨大SNSは赤字でもよいのかといった,これまでされてきた議論に通じるものである。5.おわりに東日本大震災の後,主体的に情報を扱うことの重要性が指摘されるようになった。民主主義や社会問題の解決という観点から見ても,インターネットを活用することで,さまざまなことができるようになっている。そして,自ら新しい取り組みを展開し,社会に影響を与える中学生や高校生も登場している。そういったインターネットのプラスの面,変わってきている面,能動的な面も合わせて見ていかなければ,インターネット社会をよりよくしていくことはできない。著作権についても,違法ダウンロードの刑罰化以降,音楽関連の団体がさまざまな取り組みを開始し,音楽配信サービスの環境も使いやすくなっている。こうした民間での取り組みがさらに注目されてもよいと感じている。青少年インターネット環境整備法は施行から5年が経ち,フィルタリングをはじめとする制度が,現在のインターネット社会の実態に対応できていない状況が生じつつある。依存の問題なども合わせて,立法の趣旨をより実現させる形での法改正が望まれる。そして,学校現場で情報モラルを教える先生方には,日々変化するインターネット環境に対してつねにアンテナを張り,適切な教材で子どもたちに情報モラルを考える授業や機会を提供していただきたい。また,そのような状況に対応した教材の開発・普及も求められている。同じ値段の電子機器の性能が1年前の2倍,10年で100倍,20年で1万倍になるというのが,ムーアの法則である。いまの小学生が大人になる頃には,現代とはまったく違う社会状況が存在しているだろう。次から次へと新しい情報機器やサービスが登場しているが,そのサイクルはどんどん速くなっていると考えなくてはならない。そのうち,このサイクルが落ち着いてきたら教育すればよいというのでは間に合わない。走りながら,状況に合わせて微妙に対応を変えていくしかないというのが現状である。変化が激しい中で,学ぶということがどうなってしまうのか。暇のない,退屈のない時代に思春期をどう過ごすべきなのか。羽目を外すことが一生許されない時代に,どうやって若いうちに(問題のない範囲で)羽目を外すのかなど,高校生のインターネット利用を考える中から見えてくる教育の問題について,議論し,考えなければならない時期に来ている。先生方には,ぜひこういった視点も持って,子どもたちの指導に当たっていた※注7だけるとありがたい。※注7:本講演が行われた「第62回ICTE情報教育セミナーin武蔵大学」の概要は(http://www.icte.net/seminar/detail/187.php)を参照。5