ブックタイトル情報科プラス No.003
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情報科プラス No.003
CT が発展すれば、農業をやりたいという人はもっと増えていくと思います」と語るのは富士通の木村さん。 農業といえば、厳しい自然のなかで、収穫できるかどうかわからない作物を相手に、地道な取り組みが求められるキツイ仕事。事実、農業をやろうという人は少なく、農業に携わる人の高齢化と減少はかつてないほど深刻な状況です。それなのになぜ?「5年ほど前、法律が改正され一般の企業も農業に関わりやすくなりました。わたしたちがはじめた当時はまだまだ少ない状況でしたが、いまでは多くの企業が進出しています。取り組む領域が異なりますが、各社が強みを持ち寄り、協力できれば、農業にも新しい世界が拓けてくると思います」。 木村さんのいうように、富士通のほかにも、NEC やパナソニックなどの大手電機メーカーやトヨタ自動車などさまざまな企業が農業に進出しています。逆を言えば、農業にそれだけの可能性があるからだといえます。では、具体的にどんな世界が実現するのでしょうか。「たとえば、農家の人がセンサーを身につけてビニールハウスに入れば、作物の生育状況や周辺の環境などあらゆるデータを瞬時に集め、それをネットワーク上のサーバが解析して、次に何をやるべきかを示してくれるようになると思います。もしかすると、それも自動化されて機械がすべてをやってくれるかもしれません」。 と同時に農業ならではのむずかしさも教えてくれました。「農業は一朝一夕にはいかない、本当に奥の深い世界です。ICT を活用しても、今日、明日すぐに成果が出るものではありません。先程のような世界を築くには、データを集めるなど根気のいる取り組みが必要になってきます」。 農業にとってこれから大切なのは「『失敗しない環境』をつくれるかどうかです。なぜなら、ICT が発展することで、農業にもより科学的なアプローチが浸透していきます。これまで*篤農家といわれる人々の優れた勘や経験に頼っていた部分が、科学的な取り組みで「見えるもの」になります。その優れたノウハウを誰もが共有できるようになれば、経験のない若い人でも農業に取り組みやすくなるはずです。わたしたちがやらなければならないのはそうした世界をつくりだすことだと考えています」(木村さん)。【仕事のしくみ・社会のしくみ】連載企画*篤農家:とくのうか。農業に熱心で、研究心の高い人のこと。*クラウド:クラウドコンピューティングの略。パソコンのハードウェア、ソフトウェアの機能を補完・追加するために、ネットワークを通じて提供するシステム、サービスのこと。「スマートアグリという言葉の定義は明確ではありませんが、ICTを活用した農業、またはその技術を指して使われます。その見本となるのがオランダで、ICTを使って温度や湿度などの環境を自動制御するハウス栽培が根づいています。その結果、耕地面積が日本のわずか4分の1なのに、アメリカに次ぐ世界第2の農業大国にもなっています。日本でもこれまで取り組みがなかったわけではありませんが、ICTが発展したことで改めて注目を集めているんだと思います」(木村さん)。スマートアグリって何? I今回のテーマ 農業×ICTが実現する社会農業とICTという、まったく関係のないように思える2つの世界が融合し、いま新しい世界が生まれようとしています。ICTの活用で農業にどんな未来が拓けるのか――。多くの企業が参入する「農業× ICT」の世界にいち早く参入し、高い実績をもつ富士通にお話を伺いました。情報科がもっと楽しくなる。[掲示用資料]総合エレクトロニクスメーカーとしてさまざまな事業に取り組む富士通。IC T 分野では国内トップ、世界でも第3位の規模を誇ります。同社は他社に先駆け農業に取り組み、クラウド* を用いたサービスや植物工場などを手がけています。富士通株式会社木村義和さんお話を伺ったのは農業×ICTを知るための重要キーワードイラストは農林水産省「スマート農業の実現に向けた研究会」発表資料などをもとに作成。気象センサー画像解析技術自動収穫ロボット遠隔飼育・栽培環境制御システムロボット技術自動運転技術植物工場造語「スマートアグリカルチャ」の略。植物工場などICT を活用した農業、その技術を指します。ICT を活用することで農作物の生産性は高まります。これにより農家の後継者不足や高齢化など、農業が抱える多くの問題が克服されると期待されています。スマートアグリ(農業×ICT)衛星を使った測位システムを活用し、無人でも動くトラクターや田植え機などが研究されています。これが実用化されれば、農地を拡大して収穫量を増やしたり、昼だけでなく夜でも作業ができたりすることから、生産性を高められるというメリットがあります。自動運転技術農場や牧場にいなくても、ネットワークを通じて遠隔で栽培・飼育することが可能に。放牧する牛にエサを与えたり、散水や温・湿度の調整など作物に最適な環境をつくりだすための研究が行われています。遠隔飼育・栽培環境制御システムなどの高度な技術を用いて、野菜などを生産する栽培施設のこと。光や温度、湿度、養分など、作物の生育に適した環境を人工的につくりだすことで、質の高い作物を安定的に収穫できるなどのメリットがあります。植物工場農地を細かく区切り、生育状況や土壌の成分などのデータを詳細に記録。データをもとにバラツキを把握することで、それぞれに適切な処理を行い、生産性を上げる農業のこと。センサー技術や、衛星から撮った画像を分析する画像解析技術などが用いられます。精密農業後継者の不足から、農業に従事する人に占める高齢者の割合はすでに6 割を超えています。重労働への負担を減らすアシストスーツや、収穫を自動で行うロボットの開発などが進められています。ロボット技術精密農業農業の未来イメージ5 ICT-EDUCATION WITH TEACHER 情報科+ 4