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概要

教育情報No.10

 学習指導要領が一部改正され、特別の教科「道徳科」への移行措置期間に入りました。「道徳科」を校内研究に掲げ、道徳教育の充実に取り組む学校も増えているようです。 そのような状況の中で、学校現場からは「“考え、議論する道徳”とは具体的にどのように進めればよいのか」や「これからは、問題解決的な学習や体験的な学習など、道徳の授業でこれまでと何か違ったことをやらなければならないのではないか」というような声をよく耳にします。 そうなのでしょうか。そこで、これまでの道徳教育と道徳の時間についての問題点を改めて振り返ってみましょう。 昭和33年の道徳の時間の特設以来の大改革となった道徳の教科化の背景には、いじめ問題の解決だけでなく、これまで学校現場で行われてきた「道徳の時間」が道徳教育の要として十分に機能してこなかったことへの反省があります。 平成25年12月の「道徳教育の充実に関する懇談会」報告等、これまでの道徳教育について次のような多くの課題が指摘されてきました。● 道徳の時間の特質を生かした授業が十分に行われていない。● 道徳の時間が読み物の登場人物の心情理解のみに偏った形式的な指導が行われている。● 子供に望ましいと思われる分かりきったことを言わせたり書かせたりする授業になっている。● 発達の段階が上がるにつれて授業に対する子供の受け止めが良くない。● 学校や教員によって指導の格差が大きい。● 各教科等との関連を意識した道徳授業が不十分である。 したがって、これからは全教育活動で行われる道徳教育を補充、深化、統合する役割を担う「道徳科」の授業改善とともに、発達の段階に応じて内容項目を明確に意識した学校生活における道徳教育の充実という双方の改善が道徳教育の実効性を高めるために極めて大切になります。 小学校を例にしますと「道徳科」の目標は次のように示されています。 よりよく生きる基盤となる道徳性を養うため、道徳的諸価値についての理解を基に、自己を見つめ、物事を多面的・多角的に考え、自己の生き方についての考えを深める学習を通して、道徳的判断力、心情、実践意欲と態度を育てる。 「道徳科」の目標は、即ち道徳授業の目標です。つまり、道徳授業が上記の目標を達成できる授業であること、そして子供が主体的に取り組む学習を展開することが「道徳科」の特質であり、これを満たす授業でなければ「道徳科」の授業とは言えない、ということです。  「道徳科」の目標や特質を踏まえた具体的な授業づくりはどうあったらよいのでしょう。 これまでの道徳授業は、導入で主題への問題意識や教材への興味・関心をもたせ、展開前段で中心的な教材を読み、登場人物の心情等について話し合うことを通してねらいとする道徳的価値に関わる考えや思いを深める。それを踏まえて展開後段でこれまでの自分を振り返ったりこれからの生き方について考えを深めたりする。終末では、ねらいとする道徳的価値への思いや考えをまとめたり実践への意欲を高めたりする、このような指導? これまでの道徳教育の課題? 道徳科の授業をどう創るか? 自分事として考える授業特集教科書になる道徳新たな道徳教育の充実に向けて帝京大学教育学部准教授飯島 英世04 No.10