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概要

教育情報No.10

過程が一般的に行われてきました。 では、「道徳科」の授業はこの指導過程ではだめ、ということなのでしょうか。 そうではありません。これまで、テレビ放送の道徳番組を見せて感想を書かせて終わったり、読み物教材の登場人物の心情を考えさせて終わったりするような形式的あるいは表面的な授業は、自分の生き方についての考えを深めることができる授業へと転換しなければならないということです。即ち、子供が話し合いを通して、ねらいとする価値の大切さや実現することの難しさなど様々な面から考え、その理解を基に自分を見つめ生き方に繋げられる学習にすることです。 つまり、明確な指導観をもち、道徳の時間の特質を踏まえ子供一人一人が自分事として考える道徳授業に熱心に取り組んできた先生方は、授業の方向転換をするということではなく、その質を一層向上させることが大切であるということです。 このように子供が主体的に考え、話し合う協働的な授業を展開することは、即ちこれからの教育に求められる「主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)」であり、「次期学習指導要領等に向けたこれまでの審議のまとめ(平成28年8月文部科学省)」で示された「何を知っているか、何ができるか(個別の知識・技能)」「知っていること・できることをどう使うか(思考力・判断力・表現力等)」「どのように社会・世界と関わり、よりよい人生を送るか(学びに向かう力、人間性等)」という資質・能力を育むことに繋がっていくに違いありません。  ところで、問題解決的な学習や体験的な学習は全ての道徳授業で行わなければならないのでしょうか。新しい学習指導要領の解説編には「道徳科の特質を生かすことに効果があると判断した場合には、多様な方法を活用して授業を構想することが大切である」と示されています。 つまり、これまでの指導過程の質を高めることを基本に、加えて、効果的な場合には確かな指導観に基づき、問題解決的な学習等の多様な方法を活用するということです。問題解決的な学習では、子供が自分の問題意識をもって追究できるようにすることが大切ですし、道徳的行為に関する体験的な学習では、それを取り入れることにより、切実感をもって考えを深められるようにすることが大切になります。体験的な学習を取り入れたことで、真剣に考え合う雰囲気を失ってしまうようであれば逆効果、ということになってしまいます。 また、問題解決的な学習や道徳的行為に関する体験的な学習などは、活動そのものが目的ではないということにも注意することが大切です。 平成28年7月の「道徳教育に係る評価等の在り方に関する専門家会議」の報告では、「道徳科」の評価について、学習状況や道徳性に係る成長の様子を評価することが示されています。 基本的には、道徳授業を通して一面的な見方から多面的・多角的な見方へと発展しているか、道徳的価値の理解を自分との関わりの中で深めているかといったことについて見取ることが大切です。他の子供との比較ではなく、子供の成長を積極的に受け止め、認め、励ます個人内評価として行うことになります。 勿論、授業で道徳性が養われたか判断することは容易にできることではありません。確かな指導観に基づいた道徳授業を一時間一時間確実に行い、子供の発言やワークシート、ノートや感想文などを積み上げ、個々の内容項目でなく大くくりなまとまりで適切に評価をすることが求められます。 今後、各学校の「道徳科」が道徳教育の真の要としての役割を果たせるよう、校長のリーダーシップの下に全教師が協力して指導の質的転換に積極的に取り組んでいただけることを願っています。? 道徳科の評価?問題解決的な学習などの多様な方法帝京大学教育学部准教授1954年長野県生まれ。東京学芸大学卒業、公立小学校教諭、教頭、校長、東京都稲城市教育委員会等を経て、現職。日本道徳教育学会東京支部理事、全国小学校道徳教育研究会顧問等を務めている。著者プロフィール● 飯島 英世 (いいじま ひでよ)05