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概要

教育情報No.10

 本校は全校生徒702名の学校です。この4年間、生徒の意欲をどのようにしたら高めることができるのかを考え、実践してまいりました。 本来、教育の目的は、自ら学び、自ら自己実現を図っていける主体的な生徒の育成にあり、生徒の中にある「こころ」に、やる気の火をつけることが大切なのだと考えました。そこで、本校では、体育祭の縦割り集団の編成にこだわり、そこで編成された団を生かした取り組みを展開することで、生徒のやる気に火をつけようと考えたのです。 以下、そのあらましを紹介します。 本校では、体育祭を団対抗という形で実施しています。団は1年生から3年生まで、学級を単位として、合体して編成されます。例えば、赤団は3年1組、2年3組、1年6組の3クラスによって編成されます。 従来、こうした団編成はくじ引きによって行ってきました。しかし、平成25年度より、各学級がお互いを指名し合う、エントリー制を導入しました。 まず、5月中旬から、エントリー制を意識した取り組みが始まります。自分たちの学級の課題を克服し、よさをどんどんアピールしていきます。これは1年から3年まで、学年の枠を超えてなされます。生徒集会などの場でも、アピールは行われます。 そして、6月の下旬に、団編成会議が全校生徒の参加の下、開催されます。1年生の各学級が、共に活動したい3年生の学級を指名します。すると、ある3年生の学級に指名が重なることが出てきます。すると、指名を受けた3年生は、学級で、どの1年生の学級と組むかを検討し、回答します。こうして3年生と1年生の組み合わせが決定します。これはまるでプロ野球のドラフト会議のようなものです。続いて、2年生が指名を行います。もちろん、指名する場合も、回答する場合も、なぜ、その学級と組みたいのか、その理由を説明しなければなりません。 このようにして、一つの団が出来上がっていくのです。自分たちが責任を持って選んで、出来上がった団なのです。 左の写真は、最初の指名の様子です。 いよいよ取り組みが始まります。取り組みの中心になるのは、応援合戦です。毎日、応援合戦の朝練習から一日がスタートします。この時期、遅刻してくる生徒はいません。3年生のリーダーシップの下、2年生も、1年生も必死についていきます。短期間に応援合戦の動作を覚えるのは大変なことで、みな必死の形相です。しかし、3年生は取り組みの期間中の学校生活全般にわたり、下級生を指導していくことになります。体育祭中だからといって、学業や学校の日常生活を疎かにはしません。 こうした取り組みが3週間行われ、体育祭当日を迎えるのです。ここで活躍する団リーダーはみなの憧れの的となります。 体育祭が終わって、団が解散するわけではありません。日常生活のゆがみやダメなところは団の上級生が指導にあたります。 合唱祭の取り組みでも、団の中で合唱交流が進められます。1年生は、3年生の合唱を間近に聞けるわけですから、大変よい参考になります。この取り組みを始めてから、1、2年生の合唱のレベルが随分と上がりました。  2月下旬、卒業を前にして3年生から下級生に引き継がれる「未来を創る会」が開催されます。この会では、団別合唱祭が開催され、卒業生と下級生が一緒に取り組む最後の大仕事となります。特別な練習時間は確保されませんので、3年生の主導下、自主的に休み時間などを使って練習が行われます。 また、「未来を創る会」では、3年生の生徒一人一人が下級生に、3年間の思いを語る会が位置づけられています。もちろん、同じ団の後輩に向かってです。 この取り組みを通して、3年生は最上級生としての誇りと責任を自覚し、下級生は先輩のよき姿を目にして、その姿を目標として成長することとなります。こうした取り組みを始めて4年、やる気を持った生徒たちは、授業に集中する姿、黙々と掃除に取り組む姿、学級の中で自分の役割を果たそうとする姿、そして、学力の向上、様々な面で、成長していく姿を見せてくれました。やってよかったエントリー制でした。「こころ」に火を灯すエントリー制-縦割り集団の取り組みを通して-岐阜県瑞穂市立穂積中学校 前校長 西部 巧エントリー制体育祭の取り組み未来を創る会体育祭後、そして、合唱祭取り組みの成果はクローズアップ!教 育現 場のCD33339No.10