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概要

教育情報 No.12

 勝ち負けや記録にこだわり過ぎて、感情をコントロールすることが難しい場合には、状況に応じて感情がコントロールできるよう、事前に活動の見通しを立てたり、勝ったときや負けたとき等の感情の表し方について確認したりするなどの配慮をする。 どの教科においても、一人一人の児童生徒に対して、その困難さに対する具体的な配慮が求められるのである。新学習指導要領の趣旨をしっかりと受け止め、学校は実践に移すことが重要である。 通級による指導は、小・中学校の通常の学級での授業におおむね参加でき、一部特別な指導を必要とする児童生徒のため、平成5年に法制化された。その後、平成28年12月には、義務教育学校標準法の改正があり、通級による指導を担当する教員が基礎定数化された。また、平成30年度からは、高等学校における通級による指導が法制化され、義務教育段階だけではなく、その先の高等学校にまで通級による指導が拡大された。 対象とする障害は、言語障害、自閉症、情緒障害、弱視、難聴、学習障害(LD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)等であり、指導を受ける児童生徒数は、平成29年度には全国で100,000人を超えた(全児童生徒の1.1%)。特に、自閉症、学習障害、注意欠陥多動性障害等の増加が著しい。今後、通級による指導が拡充していくに伴い、具体的な指導内容や方法の確立、通常の学級との連携、担当教員の専門性の向上などが課題として挙げられる。 通級による指導の中心である自立活動は、特別支援学校小学部・中学部学習指導要領第7章に示されている内容で、障害による学習上の又は生活上の困難を克服し、自立を図るために指導されるものである。内容は、1健康の保持 2心理的な安定 3人間関係の形成 4環境の把握 5身体の動き 6コミュニケーション の6つの区分の下に必要な要素を分類・整理した27項目が示されている。一人一人の障害の状態を的確に把握した上で、これらの内容から選択し、個別の指導計画を作成して指導が行われる。個別の指導計画作成の際は、通常の学級の担任や保護者等も連携を図っている。 特別支援学級担当教員の専門性の目安の一つとして、特別支援学校教諭免許状の保有が挙げられる。特別支援学級担当教員の特別支援学校教諭免許状保有率(以下、免許保有率)は、3割程度である。特別支援学校教員の免許保有率は8割程度であるのに対し、低い状況が続いている。特別支援学級を担当する教員は学校の中では少ない人数である場合が多く、特別支援教育に関する研修もままならず、免許を取得するための機会が得にくい状況がある。単位の認定講習会や放送大学、独立行政法人国立特別支援教育総合研究所の研修等の機会を利用し、免許保有率を高めることに、早急に取り組む必要がある。 他にも、近隣の地区で合同の研修を実施したり、OJTによる研修を強化したり、インターネットを活用した研修等を計画的、継続的に工夫したりするなど、特別支援学級担当教員がモチベーションを維持していくことが大切である。  全特協では、今後も、情報発信を続けるとともに、インクルーシブ教育システム構築を目指した提言を行っていく。東京都公立中学校教諭、東京都教育委員会指導主事・統括指導主事、東京都公立小学校長。現在、全国特別支援学級設置学校長協会会長。中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会特別支援教育部会委員。編著書として『実践!通級による指導』(東洋館出版社)、『新学習指導要領の展開 特別支援教育編』(明治図書)著者プロフィール● 山中 ともえ (やまなか ともえ)通級による指導の確立特別支援学級担当教員の専門性05