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概要

教育情報 No.13

学校教育におけるプロジェクト学習の動向―深い学びを実現する     学校創りのために―東京大学大学院教育学研究科教授秋田 喜代美 デジタル化やグローバル化等が急激に変化する社会において、これからの社会に求められる資質能力も変化してきている。2030年の教育を議論するOECD Education 2030では、下図に示すように複雑で不確かな世界を歩んでいくためのコンピテンシー(資質・能力)として、Agency(責任主体性)の力を育み、新たな価値を創造する力、対立やジレンマを克服する力、責任ある行動をとる力を育むことが必要とされている。そしてそのためには、「見通しを持ち、行動し、振り返る(AAR)」学びの過程を通して、そのコンピテンシーを育てることの必要性が論じられている。 新学習指導要領においても、深い学びを保障するためには、「習得・活用・探究」という学びの過程が大事にされている。つまり、授業は知識及び技能を習得して終わりではない。その知識を相互に関連づけて活用し、実際に自ら課題を見出して探究し、意味や価値を創造していく機会や活動のデザインが、資質・能力をさらに伸ばし定着させていくために求められている。特に今回、高等学校では古典探究や理数探究、総合的な探究の時間等で探究が強調されたことからもこの点がわかる。 プロジェクト学習は、上記に述べたような学びのプロセスを保障し深い学びへと至るための学びのあり方の一方法である。プロジェクト学習(Project Based Learning:PBL)は、現実社会に関わる真正で複雑な疑問や問題に対して、一定の時間をかけて取り組み探究をしていくことで、知識やスキルを習得し課題を発見解決していく学習方法である(BIE、2015)。学習者が小グループを組んで行う場合が多く、総合的な学習の時間等でこれまでも取り組まれてきていることが多い。しかし必ずしも人数規模は決まっておらず、また多様な教科で実施が可能なものであり(例:秋田・福井大学教育学部附属義務教育学校、2018)、教育課程内でも教育課程外でも実施されてきている(秋田、2018)。 近年どの国でもプロジェクト学習に積極的に取り組んでいるのは、いわゆる伝統的な授業形態に比べてプロジェクト学習の方が、取り組む教科の学力や知識の習得においても、協働性や自己調整能力など21世紀に求められるコンピテンシーにおいても、さらに意欲や取組に夢中になる度合とその持続時間においても、より優れていることが実証されてきているからである。どの子も夢中で取り組むことで学級内での学力格差を低減し、多様な者が共に学ぶ意義や一体感を生むことが教師の満足度や学校改革にもつながることが示されてきている。また、現実世界の課題とつなげたプロジェクトでは、将来への展望や進路選択、職業展望、社会への責任感や市民性の意識等の育成ももたらすとされている。 プロジェクト学習や探究学習(Inquiry-Based Learning)の有効性は、ジョン・デューイやジェローム・ブルーナーなどにより20世紀から指摘されてきたことである。近年ではプロジェクト学習において教師がどのように指導やガイドをするのがよいのかという、指導や支援方法の有効性と生徒の学習成果や取組過程との関係が実証的に検討されてきている。 そして、支援のあり方についての主な知見として、以下のことが示されている(秋田、2019)。特集新学習指導要領とプロジェクト学習1 これからの時代に求められる深い学び2 プロジェクト学習の効果とポイント02 No.13