ブックタイトル教育情報 No.13
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教育情報 No.13
地方高校における地域連携を軸にした、プロジェクト学習の取組和歌山県立田辺高等学校教諭 和田 充可 本校は和歌山県南部の田辺市に位置する創立123年の伝統校で、1学年8クラス(普通科6クラス、併設中学校より内部進学の自然科学科2クラス)からなり、卒業後は多くが大学に進学している。電車で2時間圏内に大学がないことから、9割以上が県外に出ることになる。 田辺市は世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」に登録されている熊野古道などがあり世界中から観光客が訪れるなど、地元にいながら世界を感じることのできる地である。その地で、高校卒業までに地元を知り地元に誇りを持った「心の芯」のある人になって世界に打って出て欲しいとの願いから、2014年度より生徒が地元に飛び出してのプロジェクト学習を本格化させている。 持続可能な開発のための教育(ESD)の理念を、総合的な学習の時間をはじめ教科や課外活動などに積極的に取り入れている。3年間のテーマとして「温郷知新 ~地元に学び、世界を舞台に活躍できる人材の育成~」としている(*温郷知新とは「ふるさとをたずね、あたらしきをしる」という意の本校の造語)。フィールドワークとプレゼンテーションを繰り返し行っている。 新入生へのアンケートでは毎年、8割以上が地元に愛着を持っているが、地元のことをよく知らないという結果が出る。地元を語る言葉を持たず、「何の特徴もないただの田舎」という漠然とした認識を抱えたまま地元を離れることが多く、「地元に愛着はあるが、地元に自信を持てない、語ることのできない」状況であった。 このことから、入学後にまず個人単位で「地元の魅力発見」をテーマにフィールドワークとプレゼンテーションを行っている。3ヶ月間かけて、地元についてインターネットには掲載されていない、人に知って欲しい地元ネタを調査し、あえて手書きでの紙芝居プレゼン法(KP法)にて全身で発表する(原稿を見ずにTEDを意識)。当初は生徒の自分の興味関心のあることでも「3分も発表できない」という不平に満ちた雰囲気である。基礎調査はネットで行うが、後は聞き取りなど直接足を運び取材を行わせる。最終的に苦労をして調査した分、生徒は「3分では足りない」と逆の不平を漏らすほどで、3分におさめようと工夫を凝らした活発で充実した発表になる。調査の手法を学ぶと同時に、生徒それぞれの地元の魅力を相互に知ることができ、調べて発表する楽しさや、地元への理解を進め、やりがいを通して課題探究へ向けてのモチベーションを高める効果もある。 2学期以降継続して「直面する課題解決にむけて」「地元の強みを活かすには」を大テーマにグループ単位で課題発見・課題解決型の探究活動・課題研究に取り組む。「グループの誰かが」ではなく「グループ全員で」を常に意識させ、KJ法を用いて全員が意見を出し仮説を設定し、田辺市をはじめ地元の様々な組織・企業・商店などの協力と支援のもとフィールドワークを実施している。最終のプレゼンテーションでグループ全員が提案・提言ができることを目標に取り組ませている。「模造紙手書き2枚・客観的なデータを入れること」という緩い縛りであるが、7分間の中に文字通りありとあらゆる工夫(商品開発デモ、聞き手をも参加させたコント形式など)をこらして、発表を理解してもらおうと努力し、最終のポスターセッションでは、調査に協力いただいた地域の方にも開放して成果発表・提言を行っている。 これらの取組では、地元を知ることはもとより、地元の人と話すことにも重点を置いている。生徒は地域社会とのつながりの希薄化から、大人と話す機会が少なくなり、親と先生以外の大特集新学習指導要領とプロジェクト学習地元に愛着と誇りを04 No.13