ブックタイトル教育情報 No.15
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教育情報 No.15
ては、学級活動・生徒会活動・部活動といった活動に取り組むことで、社会生活の模擬体験を通して、社会で生きていくための術を学び、力を合わせることでより大きなことを成し遂げていけることを学んできました。また、教科の授業では、学び合い、教え合い、助け合う等といった学習が、学力を向上させることの一助となるだけでなく、人間関係を形成する力をも培ってきました。こうした学び合い等の学習は、仲間の良さに気づくだけでなく、自分自身の良さや未熟を気づかせてくれるものでもありました。 しかし、タブレットを代表にした授業のICT化の推進は、どうしても学習の個別化が促進されるため、先に述べた「人間関係形成能力」をはじめとする様々な力の育成が疎かになりはしないかという不安が生じてきます。 それ故に、ICT化された授業にあっても、意図的に学び合い等の場を位置づけたり、これまで以上に特別活動や学校以外の体験活動に取り組むことを積極的に進めたりすることが大切になってくると思われます。 児童生徒にとって、学力の向上を一つのベクトルと考えると、もう一つのベクトルを「人間関係形成能力」をはじめとする様々な力の育成と考えることができます。この二つのベクトルの合成が児童生徒の成長と考えることができます。 すると、学力のベクトルが異様に長く、「人間関係形成能力」をはじめとする様々な力のベクトルが異様に短ければ、その二つのベクトルにより合成されるベクトルは小さなものとなってしまいます。一方で、二つのベクトルが共に長く、適度な間隔の方向性を持った時、そこで合成されるベクトルはとても大きなものとなります。だからこそ、この二つの力のバランスの取れた教育の提供が大切なのです。 いくら学力だけが優れていても人々の幸せにつながらないことは明らかです。人はひとりで生きていけるものではありません。人は、多くの人とのかかわりの中でこそ、幸せを見つけることができるのです。だからこそ、教育現場においてICT化が推進されるほど、もう一つの「人間関係形成能力」をはじめとする様々な力の育成を大切にしなければならないのです。それ故に、教育現場においては、学力向上の取り組みと人と関わっていく力の醸成が、バランスよく取り組まれていくことが求められるのです。 幸いに、中学校を退職後、幼稚園にて勤務するという素晴らしい機会を得ました。園児たちと生活を共にする中で、予想を超える園児たちの好奇心の高さや、記憶する力の向上に、驚かされました。本当に、園児たちは貪欲に知識を吸収し、自分の世界を広げているのです。そして、年長の園児たちは大人になるための必要な資質は、すでに身に付けていることに気づきました。 この未来を担う園児たちの将来のためにも、「教育のICT化」と「人として他と関わる力の育成」の両方のバランスの取れた教育の推進を願います。 新しい元号「令和」には、「美しい調和」という願いが込められているといいます。新元号「令和」には、これからの教育の在り方と符合するものであるように思えてなりません。児童生徒の成長に大切な二つのベクトル最後に昭和56年4月より岐阜県の教員に採用され、平成10年度より3年間岐阜県中央子どもセンターにて児童福祉司を務めた。平成17年度より3年間岐阜教育事務所にて、社会教育を担当。平成20年4月より安八町立登龍中学校長となり、瑞穂市教育委員会学校教育課長、瑞穂市立巣南中学校長を経て、平成25年4月より瑞穂市立穂積中学校長を務め、平成29年3月末に退職。平成29年4月より加納学園こばと西幼稚園長を務め、平成31年3月末に退職し、現在に至る。著者プロフィール● 西部 巧 (にしぶ たくみ)07