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概要

教育情報 No.16

奈良学園大学人間教育学部 准教授(平成29年4月より現職)奈良県公立小学校教諭、奈良県教育委員会事務局学校教育課指導主事、課長補佐、主幹、奈良県立教育研究所教科指導部長、奈良県教育委員会事務局企画管理室参事、奈良県王寺町立王寺南小学校校長、奈良県小学校長会会長著者プロフィール● 山田 均 (やまだ ひとし) 今回の働き方改革が目指していることは、「教師が子どもたちと真正面から向き合う時間を確保する」ことです。なぜならば、これまで日本の学校教育が積み上げてきた教育の質を維持し、さらに向上させるためには、「教師が子どもたちと真正面から向き合う時間を確保する」ことが必須なことだからです。 中央教育審議会の答申を踏まえ、文部科学省は教師の在校等の時間の上限としての目安を月45時間、年360時間と設定しました。これに対して、学校現場の教員たちの多くが「絵に描いた餅だ。」とか「現場の実態を理解しない非現実的な数字だ。」という印象をもっているのではないでしょうか。 先日、ある教頭先生たちの集まりで、この働き方改革の話をさせていただいたときにも、「そんな風になればいいですけどね……。無理ですね。」と冷ややかな反応が返ってきました。 もちろん、働き方改革に特効薬があるわけではありません。大変難しい問題です。しかし、現在の我が国の学校教育が抱えているとても大きな問題であり、今後の我が国の学校教育の在り方や我が国の未来にかかわる問題なのです。一刻も早く解決を図らなくてはならない問題なのです。 私たちの世代は、テレビドラマの中で活躍する金八先生や「熱中時代」の北野先生に、ある種の憧れを抱いていた世代です。とことん子どもに向き合い、子どものためにいかなる努力も惜しまない姿に共感し、エールを送っていました。 金八先生や北野先生ほどではありませんが、私たち教師は、「子どものために」という言葉を重く受け止め、献身的に仕事をしてきたと思います。こうした教師たちの働き方が、我が国の学校教育の向上に貢献してきたのです。しかし、今はその働き方を変えてでも、学校が行う教育という営みの持続可能性を高めていかなくてはならない状況に至っているのです。 教師の本務は授業を通して子どもを育てることです。したがって、働き方改革のポイントは、授業の質を高めることによって教育の質の向上を図るために行うということです。「教師は授業で勝負する。」という言葉には、よりよい授業をしたいという教師の授業改善への願いが込められています。その願いを叶えることは、我が国の学校教育の成果を受け継いでいくことになると思います。 そして、働き方改革を実現することにより、今、教師という職業に向けられているマイナスのイメージを払拭してほしいと願っています。子どもを教え育てるという、教師という素晴らしい仕事に憧れをもち、その仕事に就きたいという意欲ある若者が教師を目指してくれるように、魅力ある仕事であることがはっきり見えるようにしていかなくてはいけないのです。それが、我が国の学校教育のさらなる発展へとつながっていくのです。 働き方改革を実行するにあたって、まず考えなくてはいけないことは、子どもに向き合うためにも、授業研究をするためにも、最も大切なものは時間であるということを認識することです。 小学校の教師は年間700時間程度、中学校の教師は年間1000時間程度の時間外勤務をしていると言われています。こうした状況の中で、時間の使い方を見直すことが極めて重要です。 中教審の答申では、登下校時の見守り、夏休み期間の高温時のプール指導、形式的に続けられる研究指定校としての業務、地域や保護者の期待に過度に応えることを重視した運動会等の過剰な準備、本来家庭が担うべき休日の地域行事への参加の取りまとめや引率等などは削減すべきだと提言しています。これまで取り組んできたことをやめることに躊躇するのは当然です。しかし、大切な時間を優先して使って行うべきことは何なのかをはっきりさせていかなくてはいけません。そして、大胆に削減して、子どもと向き合う時間や授業研究をする時間を生み出してほしいと思います。教員の働き方改革に向けて奈良学園大学人間教育学部 准教授 山田 均これまでの学校教育の成果を持続するための働き方改革「子どものために」の呪縛を解く働き方改革の実現に向けて学校教育の成果を維持し、未来への展望を拓くためにクローズアップ!教 育現 場のCD33482日文 教授用資料令和元年(2019 年)10 月10 日発行No.16https://www.nichibun-g.co.jp/北海道出張所 〒001-0909 札幌市北区新琴似9-12-1-1TEL:011-764-1201 FAX:011-764-0690東 海 支 社 〒461-0004 名古屋市東区葵1-13-18-7F・BTEL:052-979-7260 FAX:052-979-7261九 州 支 社 〒810-0022 福岡市中央区薬院3-11-14TEL:092-531-7696 FAX:092-521-3938大 阪 本 社 〒558-0041 大阪市住吉区南住吉4-7-5TEL:06-6692-1261 FAX:06-6606-5171東 京 本 社 〒165-0026 東京都中野区新井1 - 2 - 1 6TEL:03-3389-4611 FAX:03-3389-4618