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概要

教育情報 No.17

 釜石小学校の防災教育は、釜石小学校ならではのオンリーワンの防災教育です。なぜならば、当時の釜石小学校の全教職員がOne teamとなって防災教育を理解し、実際に自分達の足で地域内を歩き、自分達の目で地域を見て、確かめて創り上げたものだからです。 さらに、その防災教育を真摯に実践する先生方がいてくれたことが子ども達の命を救ったのだと私は考えます。先生方の知恵と努力がなければ防災教育は子ども達に伝わっていなかったし、その真剣さ、情熱が子ども達に防災という種をしっかりとまいてくれていたのです。 現職の大学で、「いわての復興教育」という科目で教職を目指す学生達が被災地を歩いたり、現地の方の話をお聴きしたりするフィールドワークを経験しました。そこで、学生達が気付いたことは、「主体的な防災教育」でした。防災教育は、子どもが自ら動くことができるようにしなければならないということです。 平成24年7月「東日本大震災を受けた防災教育・ 防災管理等に関する有識者会議」の最終報告でも、○主体的に行動する態度を育成する観点から、児童生徒の発達の段階を踏まえた系統的・体系的な指導を行うこと○津波被害については、地域の特性に応じ、様々な場面や状況を想定した上で津波避難マニュアルを作成し、訓練を実施していくことが必要であること等が示されました。 釜石小学校で取り組んだ防災教育は、子ども達自身が実際に通学路を歩き、よく調べてマップを作成しました。下校時避難訓練では実際に様々な想定場所からの避難を経験しました。そういうことが主体的に行動できる子どもを育成したものと確信します。 さらに、子ども達の力です。防災授業や他の教科の学習で、先生の話をしっかりと聴く力、考え判断する力、自分の命だけではなく友達や家族のかけがえのない命を守ろうとした力、心、等々、たくさんの力があったのです。その力は、防災教育の学習だけでなく、日常の教科の学習や、道徳等々、全ての教育活動の中で、しっかりと育まれていたのです。そういうあたり前をあたり前なこととして子どもを育む土壌が地域全体にあったことも大切な要素です。 大津波を生き抜いた184人の子ども達は、あれから9年の歳を重ね、今、それぞれの道をしっかりと歩んでいます。この命は、学校教育だけでなく、保護者、地域、行政の絆の中で見守られ、生き抜いたかけがえのない命です。 このふるさとを子どもたちが将来、進学や就職でこの地を離れることがあっても、子ども達のふるさとはずっとここにあり続けます。災害があるからこのふるさとを離れようとかではなくて、私達は、時として災害をもたらす『自然』と向き合いながら、みんなが大切にしたいふるさと、みんなが大好きなふるさとであるように、子ども達が自分のふるさとを知るような学習や活動をしていくことも防災教育を支える大切な要素であると考えます。 今後、各学校が、校長先生のリーダーシップの下に、全教職員、地域住民、行政がOne teamとなって子ども達の命を守る教師、学校であり続けるため、オンリーワンの防災教育を構築されることを願っています。主体的な防災教育命・絆・ふるさと岩手大学教員養成支援センター特命教授。1957年岩手県盛岡市生まれ。岩手大学教育学部卒業。公立小学校教諭、岩手県教育委員会指導主事、公立小学校教頭、校長、盛岡市教育委員会適応指導教室専門指導員等を経て現職。岩手県道徳教育研究会顧問等を務めている。著者プロフィール● 加藤 孔子 (かとう こうこ)One teamでオンリーワンの防災教育05