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概要

教育情報 No.17

 その結果、それまでの地区避難訓練参加率が33パーセントだったものが、93パーセントまで上昇した。中学生の思いや行動が、地域住民の防災行動の変容を起こした。生徒たちは自己有用感を感じており、進路決定にも影響を与えている。 自ら防災委員に立候補し3年間活動した生徒は「防災とは自分を生きる術だ」と表現し、「将来は防災に関わる仕事をしたい」と言って卒業した。 私は30年前、同僚と「砂浜美術館」という建物の無い美術館を立ち上げた。長さ4Kmの砂浜を頭の中で美術館にしただけである。活動は後輩によって連綿と引き継がれ、その考え方はまちづくりの哲学となっている。 「砂浜美術館」を代表するイベントがTシャツアート展であるが、件の同僚がそのことを新聞のコラムに載せていたのでご紹介したい ちなみに同僚は、今は定年退職となっているが、中央防災会議の新想定の翌日から情報防災課長として、当町の防災対策に奔走し、その哲学を確立した人物である。 恵みと災い。防災教育を通じて自然の二面性をしっかり子どもたちに教え、ふるさとを引き継ぐ大人になってもらいたいと思っている。海と生きる1978年より大方町(現黒潮町)職員。1989年、砂浜美術館をたちあげ、以後「Tシャツアート展」や「漂流物展」などのイベントに携わる。2016年開催された国際会議「第1回『世界津波の日』高校生サミットin黒潮」の総指揮を執った。2018年5月より黒潮町教育長。著者プロフィール● 畦地 和也 (あぜち かずや)「海と生きる」(2019年11月9日付け高知新聞「閑人調」) 今年で30周年を迎えた砂浜美術館は5日、長さ4キロの砂浜の端から端まで、小中学生800人がつなげて展示する前代未聞「Tシャツアート展」を行った。 ちょうどその日は「世界津波の日」。他の地域では避難訓練を実施していただろう、そんな日に、全国で最も高い津波想定高を突きつけられた黒潮町の全ての児童生徒が砂浜に集まった。もちろん子どもたちは日頃から、いずれの地域も劣らぬ防災教育と避難訓練を重ねている。 砂浜美術館の30年変わらぬ考え方は「人と自然の付き合い方を求めて」である。南海トラフ地震に向き合う町の姿勢も「闘う」ではなく「うまく付き合う」である。 地震だけでなく多くの災害からしっかり命を守り、自然豊かな「ふるさと」の日常の魅力は決して見失わない。そんな、とても大切な教育が実践されていると感じた。07