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概要

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約一二〇〇年の伝統を受け継ぐ日本の筆づくりの原点へ 奈良は筆づくり発祥の地として、盛んに筆が作られています。国の定める伝統的工芸品である奈良筆は、その歴史を継承しながら高い品質を守りぬくことで、書家や専門家を中心に高い評価を得ています。そこで、より深い筆の魅力を探るために、江戸時代から続く老舗の筆専門メーカー「あかしや」にて詳しく話を伺ってきました。 現在、奈良では八名の伝統工芸士が、奈良筆を作っています。その一人であり「あかしや」で作業をする伝統工芸士の松谷文夫さんは、この道四十年の大ベテラン。筆の製造は、すべて一人の手作業で行っていて、製造できる本数は、ひと月で五百本を超える程度。今日は櫛抜き、明日は芯立てなど、自分で工程を分けてロット単位で作業をしていくので、生産量をはかるのも難しいといいます。 筆の原料には、山羊、狸、鹿、馬、イタチ、ムササビなど、獣毛を用います。動物の種類や採取時期、体毛の部位などによって、仕上がりが変わるといいます。奈良筆(奈良県奈良市)2 14 35目指せ!文房四宝博士 九世紀の初めに中国から日本に筆が伝わり、本格的に筆づくりが始まったといわれている奈良。日本の筆づくりの起源であり、今も筆づくりが続いている場所です。今回は、その原点を訪ねてみました。6奈良県 奈良市1 奈良筆の伝統工芸士, 松谷文夫さん。当日は, 筆に糸を巻き, 余分な布海苔(ふのり)を絞り出す作業中。形を整えて乾燥させる仕上げの段階に。2 作業場には, 山羊のはく製が。最も高級な筆は, 山羊の獣毛を使用。しかし, 低価格の筆にも山羊を。体毛の部位によって価格が大きく違ってくるといいます。ちなみに,大きな筆のほとんどは, 長さのある馬の毛を使います。3上から,一條秋水1728 円,月光1620 円,墨妙3240 円,飛火野1080円など,半紙用の筆。4 一般的に多いのは,太筆なら山羊,細筆ならイタチの獣毛。5昔から変わらない筆を作るための道具。筆の長さを計るのは木でできた「すんぎ」。毛並みを整える「金櫛」。6 筆づくりに使われる獣毛。左上より,リス,ムササビ,イタチ,狸,猿,豚,牛,天尾(馬の尾)。左下より,キツネ,山羊,猫,馬(胴毛),スカンク,鹿,ウサギ。18