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概要

線 Line No.10

な質問が多いですね。伝統工芸のような手作業の仕事は衰退していきますから、子どもたちに知ってもらうことは意味がありますよね」と、文化を継承する役目も担っています。 せっかくなので、子どもたちにとって使いやすい筆とはどのようなものかを聞いてみると、「小学生の書写は、上達するまでは力の加減が難しいものです。なので、太筆は真ん中から先端に弾力があるもの。細筆は先端に弾力があるものが望ましいですね。価格帯はさまざまですが、高級な筆を使ったら良い字が書けるというわけではありません。使いこなすことが大切なので、初心者の方には千円前後の筆からで十分だと思いますよ」。まずは書道セットに入っている最低限の道具で始めて、筆の太さ細さ、書きやすさなど、自分にぴったりの筆を探すのがいいということです。実際、筆を見ただけでは、プロでも良し悪しはわからず、使ってみて初めて自分の技術や書く文字に合っているかを実感できます。 手入れについては、筆の使用後は墨を落とした後に形を整え、そのまま乾燥させます。そして、竹のすだれに巻いて風通しよく保存するのが望ましいといいます。筆は、穂先の毛がとても大切で、その毛があるから、美しくまとまります。筆の寿命は、毛先があるかどうか。まとまりが悪くなってきたら、それはハケと同じ状態になっているので、新しい筆に変えるタイミングです。 もともと書道は東洋の文化なので、アジア圏を中心に筆が製造されています。中でも、日本で作っている筆はクオリティが高いといわれます。「先日、わざわざヨーロッパから買いに来られた外国人の方が、日本の筆ほど、繊細な表現ができるものはないと言っていました」と誇らしく語る松谷さん。奈良筆は、これまで多くの筆匠が文化や技術を伝えてきたことによって、一二〇〇年の歴史を途切れさせず、現在もなお愛され続けているのです。 奈良筆は、原毛を個別にひたして固め、作ろうとしている筆の特徴によって獣毛の配分と寸法を決める「練り混ぜ法」が特徴です。「一本の筆に複数の獣毛を混ぜて、筆の個性を出していきます。獣毛は、何十頭もの動物の毛を集めてばらし、均一の品質にしていく作業からはじまります。動物によって毛質の弾力や強弱は異なり、長短などを組み合わせていく作業は、筆匠の経験と目利きなくしては難しいものです」と松谷さんは語ります。味わい深い穂先の仕上がりは、まさに原材料である獣毛との対話から生まれているのです。 松谷さんは、伝統工芸士として奈良県内の小学校を訪れて、奈良筆について語る機会が年二十回程度あるといいます。その場では、小学生に筆づくり体験をしてもらって、伝統工芸を肌で体感。興味を持った子どもたちから質問の声が飛び交うといいます。「この仕事って儲かるの? 一日に何本くらいできる? など、率直奈良筆ができるまで毛に櫛を入れて根元のわた毛を取り除き混ぜ合わせる。櫛抜き798DATA株式会社あかしやもみがらの灰をふりかけ, 炭火で暖めてくせ毛を直す。毛もみ指先で少しずつ毛を抜き取りながら, 毛先を揃える。つめ抜き手金の上にまとめて置き, 板で叩いて毛先を揃える。先揃えはんさしという刃と指で, 逆毛を抜いて選毛していく。逆毛抜き毛の性質に合わせて, それぞれの毛の長さに切る。寸切り寸切りで切り分けた毛(平目)を合わせる。平目合せ平目をバラつきや片寄りがないよう何回も練り混ぜる。練り混ぜ作る筆の穂の直径に合わせてコマ(小さな筒)に毛を通す。芯立てうすくのばして広げた上毛を芯に巻きつける。上毛かけ焼ごてを穂の尻にあて根元を焼き固め, 麻糸で締めて結ぶ。おじめかための筆は, さらに布海苔の液につけ内部まで沁み込ませる。奈良筆をはじめとした書道用筆, 天然竹筆ペン, 化粧筆を販売する筆専門メーカー。本社ショールームでは, 伝統工芸士の作業現場を見学できます。(要予約)のり入れ毛で布海苔を絞り出しながら,穂先を整えていく。なぜ乾燥すればできあがり。完成7 高級な筆だと50 万円をこえるものも。8 ショールームには大小さまざまな筆が並ぶ。9 薬師寺におさめられた「月光菩薩開眼筆」。●住所:奈良県奈良市南新町78-1●電話:0742-33-6181ふでしょう19