ブックタイトル線 Line No.10
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線 Line No.10
「語彙指導」と書写指導国語を考えるこれからの連載第一回特に、小学校低学年の学力差の大きな背景に語彙の量と質の違いがあるとの指摘がなされている。また、考えを形成し深める力を身に付ける上で、思考を深めたり、活性化させたりしていくための語彙を豊かにすることが必要である。小学校低学年で表れた学力差が、その後の学力差に大きく影響していることを踏まえると、語彙量を増やしたり語彙力を伸ばしたりする指導の改善・充実が重要である(後略) 前回の連載では、アクティブ・ラーニングを視点とし論じてきた。今回は、新学習指導要領のうち、中央教育審議会答申(以下、答申)で言及のある内容の見直しを求められた箇所について書写指導との関連から取り上げて考えてみたい。 その中でも、「三つの柱」による整理を経て、【知識及び技能】に低・中・高学年と明確に位置付けられた語彙指導について取り上げたい。答申の指摘箇所を引用する。 答申を受けて、学習指導要領の低学年では「身近なことを表す語句」、中学年では「様子や行動、気持ちや性格を表す語句」、高学年では「思考に関わる語句」のそれぞれの量を増し、話や文章の中で使うことが位置付けられている。中でも、低学年は、その後の学力差の拡大や学習の質に大きく関わることから指導上の配慮の必要性が強調されている。それでは、低学年ではどのような語彙指導が有効であるのか、書写指導との関連を図りながら実践を基に考えていきたい。 低学年で活発に行われているのが、朝のスピーチタイムや体験報告文を書く活動である。何れも子どもたちは、話や文章のまとめに感想語彙を配して終わりにしている。その代表的なものが、「たのしかった。」「おもしろかった。」「よかった。」だ。密かに、まとめの御三家と呼ぶ先生もいる程に「定着」している。 これでは、語彙の量が増えないばかりか豊かな感性も育たない。そこで、一年生の一学期からでも取り組める方法を紹介したい。 話型を背面黒板に掲示し、それを見ながらスピーチをさせる。ここまでは、どの先生も実践なさっていることであろう。この話型に写真のように気持ちを話す□(枠)を設けるのだ。 さらに、子どもたちが、発表するたびに、その感想語彙を記録し掲示してやる。同じものは、カードの裏に名前を書いてやり、新たな語彙には新しいカードに記録して今までのカードの横に掲示していく。 これを丁寧に繰り返していく。 たったこれだけのことだが、一年の終わりには三〇〇近い語彙となっている。言葉の豊かさに触れた子どもたちは、より自分の気持ちにマッチした語彙を探し続ける。そして、感想語彙を感想語彙によって修飾する作業を始める。例えば、「ほかほかとおちついたうれしいきもちです。」といったことを話すようになる。この子どもたちは、あらゆる場面で感想語彙を駆使する。外国からの留学生に踊りを披露してもらったときのことだ。子どもたちは御礼のコメントに豊かな感想語彙を使って感謝した。これを聞いた留学生を紹介して下さったD大学の言語学の先生が、その語彙力に驚かれたぐらいだ。 これらの語彙を定着させる作業に書写力が欠かせない。新しい語彙を使った子どもは今まで先生がカードに書いていた作業を自ら行うという名誉を頂戴する。 しかも、書く際には、プラスの言葉かマイナスの言葉か中間の言葉かを判断して、色鉛筆(マーカー)を使って定められた色で書いていく。もちろん、字形や配置、筆記用具の特色に気をつけて丁寧に書くことは言うまでもない。こんな真剣な場こそが書写活動には欠かせない。 みんなが一定の量の感想語彙を使った時点で、掲示された多くのカードを見ながら一枚の紙に各自が丁寧に書き写し「自分の語彙表」にする。この語彙表が何枚も貯まっていく。これらの表を見ながら、さらにスピーチや体験報告文に入れる自分の気持ちにぴったりの語彙を探す。 このような作業を繰り返して行くと、気持ちが先にあって適切な語彙を探していたはずなのに、語彙表を眺めているとその時の気持ちが理解できるようになったといったことが起きてくる。自分でも十分にその時の気持ちが掴めていなかったのだ。それを、みんなの使った感1感想語彙の指導06