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概要

線 Line No.11

記具が毛筆から硬筆に変わった頃、日本では毛筆を使った教育が減少した時期もあったそうですが、現在のように再び毛筆による指導がされるようになりました。それは、毛筆による指導を行わなくなってから、子どもの書字に問題が現れ始めたからだと考えられています。 毛筆学習はもちろん大切で、「硬筆にいかす毛筆の授業」の研究も進められています。一方、硬筆は掲示をしたり展示会に出したりするために、「文字を丁寧に書く時間」に留まってはいないでしょうか。硬筆の指導も、毛筆の指導と同じように、自分の文字を振り返りながら、どう書けば相手に伝わりやすい文字になるのか、考えながら行うことが大切だと考えます。硬筆は日常生活で最もよく使っている筆記具だからこそ、きちんと指導していくことが大切です。そして、その指導をじっくりできる時期が一、二年生だと思います。特に、一年生の初めの、国語の平仮名の指導と重複させて指導ができるため、関連させて学習が進められます。国語の授業と横断的に硬筆の指導をすることで、平仮名の学習をしたときに、「これは折り返しだね」「このむすびは縦長三角だね」と、書写の時間に指導したことをつぶやく児童の姿を今後も目指して、指導していきたいと思います。 外形を気にすることで、ますの真ん中に文字を書く児童も増えたように思います。また、国語の授業で平仮名を学習したときに、お手本の文字を線で囲い、外形を確かめる児童もいました。 今後も、普段の授業の中でも「この文字は○○の形だね」と、外形を意識する姿や、一ますいっぱいに文字を書いていた児童が、外形を意識して、ノートに記録する姿に期待したいと思っています。 今回の実践では、外形を考えることで、外形への意識を高めることをねらいとしましたが、児童によっては、まとめ書きのときに自分の文字をなかなか修正できず、試し書きとまとめ書きが同じになっている児童もいました。実態にもよりますが、試し書きとまとめ書きだけでなく、ワークシートを使って、書く量をもっと確保する必要もあったかと思います。 また、「この文字はこの外形」と、答えを出すのではなく、どちらの方がより読みやすいか、思考する過程を大切にしましたが、形にこだわる児童もいます。算数のように答えが出るものでもないので、「どの形にも当てはまらない文字があること」や、「どっちの形にも当てはまる2成果と課題4硬筆学習の大切さ3支援「おうち」の効果と作り方文字があること」を、事前に話しておく必要があったかもしれません。 今回は多くの文字で考えてもらいたいと思い、五十音すべてを考えましたが、考える文字が多く、一つ一つの文字をじっくり考えることができなかったようにも感じます。「この文字は、どっちかなあ」「こっちのおうちの方がきれいに見える」と、丁寧にその文字と向き合う時間にするのもよいかと思います。 外形を「おうち」に例えることで、それぞれの文字には、字形が整って見える形があることを、わかりやすく伝えられます。児童は、自分に任された文字がどの外形(おうち)なのかを確かめるために、おうちに文字を当てたり、近くで確認したりしながら考えていました。  「おうち」はラミネートすることで、ホワイトボードマーカーを使えば何度も書くことができます。外形を捉えられない児童には、その文字を書いてあげるとわかりやすくなります。 日常の筆記具は硬筆なのに、学校教育では毛筆による指導が今でも行われています。それは、毛筆を使って書くことで、文字を正しく丁寧に、そして滑らかに書けるからだといわれています。日常の筆?まとめ書きをする。 一通り、外形について考えたところで、まとめ書きをしますが、その前にもう一度、「い(横長の四角)」「も(縦長の四角)」「ふ(三角形)」「ね(だいたい四角)」の外形を確認します。 ワークシートで、試し書きのときの自分が書いた文字を見て、「ここはこうだったから、こうやって書こう」と、自分なりの課題をもち、外形を意識しながらまとめ書きをしていきます。 普段は外形を気にして文字を書いていなかった児童も、今回の授業を通して外形のことを知り、意識が高まったように思います。ワークシートのまとめ書きからは、文字を囲って、どの形に書けばよいのか確かめながら書く児童の姿も見られました。13