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概要

線 Line No.11

■博物館の玄関にある, 吉井源太のマスコット。流しすきがあり、流しすきは月一回限定の体験であることと、高度なテクニックが必要。「社会見学で訪れる小学校三年生から五年生に、紙すき体験は大好評です。溜めすきは原料を溶かしたすき槽(ぶね)から簀桁(すけた)という道具で紙料を汲みあげ、バランスよく揺り動かしながら、和紙をすくというもの。単純作業ながら力の加減で風合いが異なるので、人それぞれ趣きの異なるものができあがります。所要時間は四十分ほどで、小学生が目をキラキラさせながら体験していますよ」。しっかり乾燥させたら、はがき八枚もしくは色紙二枚ができあがります。自分ですいた世界に一つだけの和紙への愛情もひとしおで、何に使うかを考えるのも貴重な時間になります。「子どもたちにとって、もっとも身近な和紙といえば、書写の授業で使う半紙をはじめ、工作やちぎり絵で使う色とりどりの和紙ですね。用途によって原料や工程が変わることや同じ和紙といっても風合いが異なることを見て触って、体験して知ることで、思い入れもひとしおです」。   古くは衣食住で暮らしのシーンを彩っていた和紙。現在、身のまわりを見渡せば洋紙があふれているものの、最近では若手クリエイターによるおしゃれな和紙製品も増えていて、和紙が懐かしくも新しいものとして身近に寄り添っています。人の手で長い工程を経て一枚一枚仕上げていく手すき和紙は、日本が世界に誇る伝統的工芸品であり、後世にも伝えていきたい日本の文化の一つです。薄い手すき和紙「土佐典具帖紙(とさてんぐじょうし)」。厚さは〇.〇三mm にも関わらず、均等で破れにくいことが特徴で、主に文化財の修復や美術工芸品に使用され、イタリアをはじめ世界中からのオファーが絶えません。 高知と紙の歴史は古く、さかのぼること平安時代。『土佐日記』で有名な歌人紀貫之が、土佐の国司として製紙業を推奨したといわれています。さらに、江戸時代には土佐七色和紙(とさなないろがみ)を創製し、幕府へ献上したことから、土佐和紙の名が広まりました。また、土佐和紙の功労者として知られるのが、明治時代の吉井源太。典具帖紙やコッピー紙など二十八種類もの紙を考案したり、製紙用具を改良し、生産性を数倍向上させたりと、国内外の博覧会で優秀な賞を受賞し輸出にも貢献するなど、その業績は世界レベルで認められ、今でも土佐和紙のシンボルとして多くの人に愛されています。 和紙の原料となるのは、コウゾ、ミツマタ、ガンピなど。それを栽培、収穫、そして煮て繊維質を取り出し、水洗い、漂白、ちりを取り除き、繊維を溶かして紙料を作ります。この紙料が紙質を決めるポイントになり、紙料を使って紙すきをし、和紙を形成します。 「一人前の紙すき職人になるには十年もかかると言われますが、紙すき体験なら職人の手ほどきを受けながら簡単にできますよ」と話すのは紙の博物館技術員の北岡さん。紙すき体験には溜めすきと10 914 1213DATAいの町紙の博物館■路面電車の伊野駅は, かつて和紙などの輸送に利用する貨物電車用に作られた軌道。■透明度の高い仁淀川。●住所:高知県吾川郡いの町幸町110-1●電話:088-893-0886●入館料:500 円, 小・中・高生100 円●開館時間:9:00 ~ 17:00 (紙すき体験は16:00 まで)●休館日:月曜(祝日の場合は翌日休み)9 1011■12紙すきに必要な用具や製作の様子を展示する。■13ミュージアムショップでは半紙の販売も。■14半紙用の切本(断裁用の板)。1119