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概要

線 Line No.12

「語彙指導」と書写指導国語を考えるこれからの連載第三回1 作品を構成する語彙  この学習活動は、大阪府の北河内地区を中心として広く行われた歴史をもつ。しかし、元は日本のペスタロッチとして多くの教師の尊敬を集めた芦田恵之助先生の実践を参考にさせていただいたものだ。 四十年程前、私は「雨読の会」という研究会で仲間と共に『芦田恵之助先生の教壇記録』(注1)を学習していた。そのなかに、昭和九年二月十日に日本女子大学附属高等女学校一年東組で行われた薄田泣菫作「探幽と松平伊豆」を教材としたご授業の記録があった。 そこで、子どもの主体性を重んじた一段一語という学習に出会い、その実践化を提起した。その方法とは、次のようなものだ。 形式段落ごとに、自分が大事だと思う言葉を皆書いてみる。三語でも五語でもよい。そして、一語に絞る。ノートに横に一線を引いて、それを形式段落に区切って一語を書いていく。芦田先生は、「上の線が文章で、下の一段一語はお庭の飛び石のようなもの」と解説されている。これを予習の課題としても与えられている。 私たちは、子どもたちにノートに段落番号とその下に自ら選択した一語を刻みつけるように丁寧に書かせた。この作業そのものが作品の内容や構造を把握する理会に大きな力を発揮した。 そして、その一段一語から作品の展開構造や往還構造、反復構造等を捉えさせ、作品に対する思いや考えを表現様式に合わせて記述させた。 この取り組みは、当時の恵雨会会長の故吉田俊一先生(元守口市立橋波小学校長)にお褒めをいただき、そのお陰で北河内各市にも広がっていった。 これは学習基本語彙の発想から作品で使用される語彙に着目して単元のなかで活用するものだ。指導目標や表現様式に沿って様々な一覧表が作れる。 ここでは、観察報告の説明文の「読むから書く」へのプロセスで有効に機能する説明文基本語彙一覧表を示す。この一覧表は、指導目標に合わせて語彙の範囲を「考えるための言葉」(思考語彙)と「観察・実験のための言葉」(観察語彙)の二種類に絞って教師の方で作成した。作成に際しては、既習の説明文の使用語彙や類語辞典を参考にした。 子どもたちは、この一覧表を傍らに置いて説明文を読んでいく。基本語彙を見つける度に種類に応じて本文にカラーリングしていく。この言語操作だけでも、「あっ。」とか「?になっている。」と、次々に色を塗りながら発見をしていく。 語彙の連鎖(注2)を見つけたときには、筆者の工夫と説明文の奥深さに感心していた。 これらの発見の感動をもって、二種類の言葉を画用紙を使って上下二段にまとめる。上段は観察語彙、下段は思考語彙だ。 この作業の際には、構造が見えるように筆記具を色鉛筆やマーカーにしたり、適切な文字の位置や間隔にしたりして後の思考操作がスムーズにいくように工夫することが求められる。ここに書写の力が欠かせない。 完成した図は、子ども自らが作成したワークシートであり、説明文を語彙だけの構造体に変換したものになっている。  前回の中学年では、語彙指導を日常的な質の高い言語活動とどのように結びつけるのかを実践例をもとに提案した。 今回は、作品のなかの語彙に着目して高学年での実践を書写指導との関連を考えて提案してみたい。  まず、ノートを上下二段に線で区分しておく。上段は狭く、下段は広くする。上段には作品で使用されている漢字だけを抜き書きする。それを眺めているだけで、作品がイメージ豊かに浮かんでくる。 次には、空けておいた下段に作品を見ないで漢字を辿って再現していく。できあがったら比べてみて、自分がもつ作品世界と原作との差異を楽しんで感想を書く。 漢字が語彙としてもつ意味の広がりや深さを、一連の言語操作によって気づくことができる。 詩などは、簡便にできるので子どもたちは面白がって取り組み、効果的だ。 書写の指導事項との関連は、用紙全体との関係や文字の大きさや配列、特に漢字と仮名の大きさや配列に注意して書くことにある。1漢字の「べた書き」2一段一語3説明文基本語彙一覧表06