ブックタイトル線 Line No.12
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線 Line No.12
この図から、先のカラーリングのとき以上に子どもたちは様々な発見をする。 思考語彙と観察語彙が往還して、何度か繰り返すなかで高まったり、それぞれの語彙が連鎖しながらも塊となって展開して深まったりしていくことを指摘する。 学習活動を進めていると、子どもたちは次の課題である「観察報告文」を書くことに自ずと移っていく。語彙が「お庭の飛び石」のような役割を担い、子どもたちの記述を誘うのだ。即ち、「今、観察文ができました。」と口頭で作文を発表しだす(注3)。 この構造図は、内容に関わる語彙(基調語・話題語句)が除かれ、汎用的な語彙(基幹語・説明語句)のみで構成されているので、「観察報告文」を書くモデルとなっていたのだ。 一人の作家の描写の語彙を把握する言語活動だ。高学年といえば、宮沢賢治の名が挙がる。その魅力の一つが独特の言葉遣いや造語と思われる語彙の数々であろう。 まずは、紹介のために宮沢賢治の作品を十編読ませる。一番好きな作品を選ばせ、用紙にあらすじと挿絵と「上手く書いているところ」の三つの要素を記述させた。この用紙は、あらすじは罫線で、「上手く書いているところ」は引用の必要があるのでマス目の原稿罫で構成した。ここでも書写の力が支えとなる。各自の用紙を学級でまとめて、冊子にして交流をした。2 図解を支える語彙 次に、交流で得た観点(描写のうまさ)を中心にして「やまなし」を含むファンタジー作品三点を重ね読みして共通点と相違点をまとめた。 この学習活動を通して、作品の描写の語彙を捉える観点を五つに整理した(?自然 ?会話 ?例え ?音?分からない言葉)。 子どもたちは、三十一編の賢治作品を読み進めていき、観点ごとに表現紹介を記述した。そのなかからグループで理由の明確なものを学級で冊子にまとめた。 冊子をもとに、表現、理由、作者宮沢賢治の三つについて交流した(注4)。 高学年になると人物の相互関係を捉えることが心情を考える際にも重要になる。人物を捉える語彙(属性・性格・行動・心情等)が相互にどう成立しているのかを図解する。文字の大きさや位置、色、図との関係等、書写での指導が生きてくる。甲南女子大学教授・交野市教育委員。教育委員会指導主事、四條畷市・交野市の小学校長、中央教育審議会教科別専門部会(国語)委員、学習指導要領解説国語編作成協力者等を歴任。二〇〇七年度、第三十八回博報賞受賞・文部科学大臣奨励賞受賞。日本文教出版「小学書写」教科書編集委員。尾﨑靖二おざき やす じ 「大造じいさんとガン」では、単に題材レベルで捉えるだけでなく、問題レベルで考えるために構造を図解することが有効だ。おとりを巡って、残雪・ハヤブサ・大造が対置する場面。図解することで作品の中にある構造(作用)を確認することに連続して子どもたちが発見する構造を書き込んでいくことが可能になる(注6)。 学習の振り返りをシンキング・マップやツールを使って図解によってキーワードを整理する。振り返りの時間が、単なる感想の羅列で終わっている現状がある。学習内容の整理ができていないのでは、的確な感想など生まれない。知識の定着のためにも不可欠と考えられる。当初は、教師が与えたマップを使って語彙を整理するが、次第に学習した複数のマップから適切なものを選択してまとめるようにする。学習過程や獲得した知識・技能が整理される。その整理を踏まえて感想を記述することでより主体的な学習となる。※「図解を支える語彙」が十分展開できていない、別 の機会に譲りたい。(注5)注1 芦田恵之助先生鈴木佑治先生教壇記録と講話 いずみ会 一九七八年注2 ?思った↓理解した↓決心する↓願っている等?作品の中で語彙が変化し て連なっていること注3 実践国語研究no131 明治図書 一九九三年注4 実践国語研究no147 明治図書 一九九五年注5 新学習指導要領国語「情報の扱い方に関する事項」には、「図などによる 語句と語句との関係の表し方を理解し使うこと」が取り上げられている注6 実践国語研究no118 明治図書 一九九二年1人物相関図4物語表現紹介事典3作品を通した学習内容の図解2作品の構造図07