ブックタイトル線 Line No.7
- ページ
- 3/16
このページは 線 Line No.7 の電子ブックに掲載されている3ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。
このページは 線 Line No.7 の電子ブックに掲載されている3ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。
線 Line No.7
当に芽生え、そのときに子どもはすごく成長するし、自ら次の課題を見つけていこうします。「できた!」っていう成功体験ですよね。何かのきっかけで、自分の言いたいことが伝わったとか、書きたいことが書けたとかっていう本当の達成感が得られたら、それを手がかりにして次にチャレンジするっていう気持ちが芽生えてきます。いかにしてそこに導くかっていうことが大事であり、忍耐力や集中力をつけていくっていうことが教育には必要だと思います。Q子どもたちが興味を持つ事柄には、書きたいっていう気持ちが自然と湧いてくるでしょうね。やっぱり大切なのは題材ですよね。私たちは、教科書編集の過程で、ものすごく時間を割いて検討に検討を重ね、目標に合う言葉を慎重に選びます。しかし、教科書に掲載される題材としての言葉が子どもたちの心に響くかっていうと、必ずしもそうじゃないかもしれません。ちょっとよそ行きの言葉だったり、美化されていたりね。日常の出来事とか、知っておいてほしいと思うような言葉とか、おそらく先生目線で子どもたちに伝えたいメッセージ、書かせたい文字・言葉っていうのは、教科ごとにあると思うんですね。そういったことは、特に書写の専門家でなくても、自分の専門とすることを活かし、その先生らしさを反映した書写の授業ができるんじゃないでしょうか。Qところで、従来の紙の教科書に加えて、デジタル教科書の導入に向けた本格的な検討が始まりました。教科書のデジタル化によって、効率的になることがよい場合と、アナログ的な部分が失われていくのではという危惧…たとえば紙の質感や、本を手にしたときの手触り、自分の体を通して得る感覚など、そういうものは今後も変わらず必要だと考えています。私は、デジタルについて二つのことを感じています。一つは、現場の多くの先生が書写の専門家でないとすると、「私下手なのでできません」という方は、デジタルのようなツールを上手に利用すればいいのです。たとえば筆使いは動画を見てもらい、その見方やポイントは自分で説明する。このとき、きちんと説明できるようにすることが大事ですね。先生ご自身が書けるようになるための修練は、なかなか一朝一夕にはいかないですけれど。ですから、大切なことは、使い方だと思います。そしてもう一つは、程度を体感することがデジタルでは難しいということです。最近、毛筆の授業で墨をすることが減っていると聞きます。現実問題として現場では、子どもたちは服を汚すし、汚れた水を流してはいけないとか、そういった難しい面があるっていうのもわかるんですけど…あと、書く時間が少なくなるとか。紙とデジタルの一番違うところは、たとえば紙の表と裏は、どちらがツルツルしてるのかザラザラしてるのか、どのぐらい墨をすったときにどれくらいの濃さになり、どのぐらい筆に含ませるとどれくらい滲むとか、書写はそういったことを学ぶ宝庫なのに、子どもたちが自分でそれを察知し、知る機会を減らしてしまうのは残念だと思いませんか。文字は真っ黒じゃないとダメっていうことはないはずですよね。書く時間を確保するために墨をする時間を惜しむのは、もったいないと思うんです。ありとあらゆるところに自分の五感を通して感じ取れる要素がいっぱいあるので、それらを授業の中で切り取らずに丸ごと扱ってもらえたら、子どもたちは積極的に学ぶと思います。いろいろなことがデジタル化される時代に、なぜ、わざわざ筆を持って筆圧を感じ取るような授業をするのかを考え、そこに含まれる要素にもっと目を向けることが必要ではないでしょうか。Q最後に、メッセージをお願いします。一番お伝えしたいのは、言葉を豊かにするっていうことは、子どもたち自身が豊かになるっていうことだということです。そのための教科書でありたい、教科書を作りたいという思いは、きっと現場の先生方の願いと一緒だと思うんです。私は書写が不得意だからっていう目線じゃなくて、ご自身のご専門とされてるなかから書写を覗いてみてください。特に国語科の先生には、国語と書写を切り離さずに、いかに国語の豊かさがいろんな形で書写に反映されてるんだっていうところを、教科書を通じて拾い上げてもらえたら嬉しいですね。言葉を豊かにするっていうことは、子どもたち自身が豊かになるということ。そのための教科書でありたいと思っています。3