ブックタイトル線 Line No.9
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線 Line No.9
アクティブ・ラーニングと書写指導 連載三回目を迎えるので、今までの内容を振り返っておこう。第一回目は国語力から見た書写指導を、第二回目は授業過程から見た書写指導をそれぞれアクティブ・ラーニングを視点とした改善について論じてきた。今回は、子どもたちが主体となる学習過程について「対話的に学ぶ」を軸に考えてみたい。 事例としては、第二学年に学年別漢字配当されている「岩」という漢字を取り上げた、「上下の文字の組み立て方を考える」四年生の授業だ。これは、書写の指導事項「文字の組立て方を理解し、形を整えて書くこと」から見ると四年生に適した教材である。既に日常的には読んだり、書いたりしている漢字だ。そこで、指導の際には、既知の文字の書き方「点画の長短や方向、接し方や交わり方などに注意して、筆順に従って文字を正しく書くこと」(新学習指導要領では「点画の書き方や文字の形」「点画相互の接し方や交わり方、長短や方向などに注意して、文字を正しく書くこと」)を振り返ったり、仲間とのグループ学習等を通じたりして、対話的に学ぶことが大切となる。 対話的に学ぶというと、子どもたちがペアやグループ、クラスで話し合う中で共通点や相違点、新たな発見を通じて学び合うことが思い浮かぶが、それだけではない。今まで自分が学んできた学習履歴に沿った既知や実態、先生や教科書等から示される新たな知識などとも「対話」しながら学ぶことも大切だ。 全ての授業において、大切にしなければならないのは指導事項の何を子どもたちは既に学び、知っているのかを明確にすることだ。学習の連続性に目をやらなければ、子どもたちの中に知識や技能の蓄積が妨げられるからだ。 漢字学習は、読みが先行する。そして書きが続き、文字の整いはさらにその後となる。そのため、二年生の配当漢字を四年生の書写の教材とすることになる。このような学習履歴の特色を踏まえた学習過程が必要となる。 さらに、書写の指導事項「文字の組み立て方」は全く新しい学習ではないということに留意する必要がある。既に基本点画の組み合わせにおいては文字が整えられることを学んでいるし、横画や縦画が複数並ぶ漢字の長さを正しく書く学習からは、画の長短のバランスを考える重要性を認識している。それは、横画を単純に組み合わせるのではなく、長短や方向が整えられなければ「三」という文字とは認識されない(現行学習指導要領解説国語編P.49)といったことだ。 また、文字の形の整え方も学んでいる。概形を捉え、同時に中心を捉える学習をしている。概形は画の長さや方向に左右される。概形の学習を通して漢字相互の似ている所を探すことで、部分になった時に生じる字形や点画の変化に気づく。例えば、山の概形は△であるが、岩になったときには縦画の真ん中が一番長いという特性は変わらないが三角形の形が扁平なものに変わるというように、概形の学習が「組み立て方」に繋がっている。 既習事項を振り返って対話的に学ぶ一方、既に使用している実態からも主体的な対話が必要となる。日常生活の中でどのように書いているのか、字体と字形の関係に配慮しながらも学習や生活の様々な場面を振り返る必要がある。具体的には、各教科等の学習ノートや作文等で各自が書いている漢字を見つけて取り出して「手本」や仲間の文字と比べてみることだ。見つけ出すことが困難な場合やさらに現状の自分の文字の実態を認知するためには、その場で書いて比べてみる。これは、大村はま先生が昭和二十四年に戦争中に行き届いた教育を受けられなかった中学生に平仮名の形を指導する際に用いられた方法でもある(『大村はま 国語教室「5 書くことの計画と指導の方法」』平がなの形を整えるP.272)。 既習事項や自分の実態等を振り返って課題を見出すことは、導入学習の役割である(導入学習の役割と方法については、拙著『「言葉の力」を高める新しい国語教室入門』「5 導入学習を確立する」を参照頂ければ幸いだ)。自分の実態を振り返ることは共通の学習課題の設定に役立つが、同時に個別の課題を見出すことにも大いに有効で意欲を喚起し、学びに向かう力を醸成する。 ここからは、具体的な学習過程の展開の形で提示することにする( =先生、 =児童▼=学習活動でそれぞれ示す)。 振り返りをします。山という漢字はどんなこと に気を付けて書けば良かったですか。▼グループワーク(GW)で確認し発表。 並んでいる縦画に気を付けます。 中心になる画に気を付けます。 長く書く画がどれであったかを見つけるこ とです。 それでは、ポイントに気を付けて書いてみま しょう。その後で、チェックしましょう。▼ワークシート(WS)に書く。その後、ペアで手本 と比べて良い点と直す点を朱書きで相互評価する。 点画に気を付けることができましたね。それで は、今度は石という漢字です。ポイントを発表 して下さい。 はらいの方向に気を付けます。 おれをうまく書きます。国語を考えるこれからの連載第三回06