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概要

RooT No.14

■「内容のスパイラル」と「方法のスパイラル」■見ていくと,暗示的な「内容のスパイラル」が明示的に見えてくるはずです。「比例と反比例」は小5・6だけでなく中1にも出てきます。中1の「比例」と中2の「一次関数」の関係や,中3の「2乗に比例する関数」と高1の「二次関数」の関係もそうですが,「特殊から一般」という関係になっている「内容のスパイラル」を,教材研究の段階で意識することが大切です。さらに,「informalからformalへ」といった特徴が指摘できる「内容のスパイラル」もあります。この観点も平成10年告示の学習指導要領では後退していましたが,現行では復活しているものです。小5の「図形の合同」は中2の「図形の合同」のinformalな学習に当たっている帰納的推論に基づく学習です。中2の「図形の合同」の学習も,「三角形の合同条件」を証明している訳ではなく,数学的に見れば決してformalな学習とは言えませんが,小5からの「内容のスパイラル」になっていることは明らかで,演繹的推論に基づく学習を生徒に経験させようとするものです。小6の「縮図や拡大図」と中3の「図形の相似」との関係にも同じようなことが当てはまります。算数・数学指導における小中連携についての基本的な理解と言えるでしょう。4.「方法のスパイラル」前節の最後に小中連携のことを記しましたが,小中連携を教科レベルで行っている中学校区で,研究を始めてすぐに気付かれることがあります。それは,小学校と中学校で授業の進め方が大きく異なっているということです。10年程前によく聞かれた(中学校の数学の先生が算数の授業を参観した時の)感想は,「小学校では,子どもと一緒にめあてを作るんですね。」というものでした。最近では,中学校の数学の授業でも導入を工夫していて,生徒と一緒にめあてを確認する授業が増えてきたと思います。「数学的活動を通して」という文言が,算数科に倣って中学校や高等学校の数学科の総括目標の冒頭に置かれたことが,こうした傾向の大きなきっかけとなったのではないかと推察します。中学校数学の教科書も導入の工夫が進み,算数科の教科書に近いイメージになってきていると思います。「方法のスパイラル」の大切なところは,学習方法を繰り返しながら,次第にその学習のよさがわかってきて,学習者の資質・能力の育成が実感できることだと思います。そのためには,その学習方法が適切でなければなりません。技能を高めるためにドリル学習が有効であるのと同様に,より深い理解のための学習や,数学的な考え方を育てるための問題解決的な学習が,適切な本時において計画されることが肝要です。文部科学省において,「育成すべき資質・能力を踏まえた教育目標・内容と評価の在り方に関する検討」がなされています。次期の学習指導要領の在り方に関する議論ですが,教えるべき知識・技能ベースの教育課程から,育成すべき資質・能力ベースの教育課程に移行することが示唆されています。「方法のスパイラル」は,資質・能力を効果的に育成する上で,極めて大切な観点であると言えるでしょう。2014 No.141