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概要

RooT No.14

系統性・連続性を意識した算数の指導「式」から考える算数の系統帝塚山大学教授勝美芳雄「算数・数学は,前に学習したことが分かっていなければ,次の学習ができない」とよく言われます。そして,このような学習の特性は,算数・数学が系統性や連続性の強い教科であることがその原因であると指摘されることも多いようです。それでは,算数・数学の系統性や連続性とはどのようなことをいうのでしょう。ここでは,「式」を例に考えてみましょう。1.先生,「答え」は?今から約30年も前の事で恐縮ですが,私にとって忘れられないエピソードがあります。当時,教員駆け出し3年目で,6年生の学級担任をしていました。「比例」の学習も終盤になり,「比例の式」を理解することが目標である時間の最後のことでした。当時,「比例の式」については,現行の学習指導要領とほぼ同じ扱いで,文字x, yを使って指導することになっていました。したがって,以下に示す現行の教科書と同じように板書してまとめました。(『小学算数』6年下P.22)ところが,この直後に一人の子どもが元気よく手を挙げて質問をしたのです。子ども:先生,質問があります。勝美:何かな?子ども:「y=(決まった数)×x」が比例の式なら,答えは何ですか?小学校教員駆け出し3年目だからといって許されることではありませんが,この時の私には質問の意味がすぐには理解できませんでした。その後次のようなやりとりがありました。勝美:それは,どういう意味?子ども:算数の問題を解くとき,「式」を書いたら「答え」を書かないとだめでしょう。だから…子どもの考えている「式」と,この時間に学習した「比例の式」が,同じ「式」という語を用いているにもかかわらず違うところがあることに,恥ずかしながら,この時私は初めて気付いたのです。しかし,この後,子どもたちにどのように答えたのかはほとんど覚えていません。2.式とは何か子どもの質問に答えるためには,「式とは何か」が分かっていなければなりません。ところが,式の定義は,統語論(syntax)の範囲で行い,記号を並べる規則を述べることになりますから,それを子どもに教えるわけにはいきません。したがって,1年生の教科書で「式」という用語は,下記の4 2014 No.14